錦木のくれなひ容るる没日かな

錦木のくれなひ奪ふ没日かな 

錦木の紅つのる没日かな

鶺鴒の羽音に散れりプラタナス

みづうみに宵の雨あり松手入

みづうみに宵の雨あり後の雛

みづうみに宵の雨あり初紅葉

みづうみに宵の雨あり新松子

駒鳥の高音伸びたり山毛欅峠

かりがねの峠より降る高音かな

峠より降る初鴨の高音かな 

深空より降る初雁の高音かな 

深空より降る初雁の声高し

薄氷や海潮渡る弥撒の鐘

薄氷や空にふくらむ弥撒の鐘

薄氷や溪鳴りわたる弥撒の鐘

草市の淡青の灯を引きにけり

淡青の灯を引くころや草の市

淡青の灯を引くころよ盂蘭盆

揚舟に日の照り返す立葵

舷梯に日の照りつけぬ立葵

春の夜や脱ぎし衣の匂ひ立つ

身を滑るごとく脱ぎたり花衣

秋袷滑らしむるが如く脱ぐ

羅を脱ぐや滑らすごとく脱ぐ

行く秋や沐浴の子の目の雫

行く秋や沐浴の子を泡立てて

子の四肢を泡もて包む良夜かな

子の四肢を泡もて包む夜長かな

子の四肢を泡もて包む柚子湯かな

菊月や泡もて円く洗ふ吾子

子の四肢を泡もて包む初湯かな

カステラのやうな子の頬小鳥来る 

カステラのやうな子の頬秋澄めり

蕗の葉を流るる露となりにけり 

蕗の葉に雫こぼるるばかりなり

蕗の葉の露流れ来て露毀つ

梢より花街の灯よ新走り 

梢より夜霧の街の灯りゆく

梢より夜霧の街の灯るかな

梢より夜霧の街の灯りけり

梢より夜霧の街の灯るなり