俳句歳時記 冬 第五版 時候

淵なれば散りて流れずもみぢ葉のふちの底ひに朽ちて沈めり 生方たつえ

子持嶺の岩山かげゆ取りて来し松藤入れて風呂立てにけり 倉沢誠一郎

聖堂の木の香奪はれつつ冬へ 広瀬直人

初冬

初冬の木をのぼりゆく水のかげ 長谷川双魚

水に靄動きはじめて初冬かな 永方裕子

フルートの唇たひら冬はじめ 柘植史子

神無月

降ってまた空深くなる神無月 広瀬町子

立冬

立冬や青竹割れば中の白 鷹羽狩行

回転木馬つぎつぎ高し冬に入る 藺草慶子

小春

飴のごと伸びて猫跳ぶ小春かな今瀬一博

冬めく

冬めくや透きて遠のく峠の木 鷹羽狩行

石鹸のネットに砂や冬めきぬ 小野あらた

霜月

霜月や朱の紐むすぶ壺の口 神尾久美子

十二月

削るほど紅さす板や十二月 能村登四郎

風の日の雲美しや十二月 有働亨

青空を海に拡げて十二月 伊藤道明

冬至

酒になる水やはらかき冬至かな 大屋達治

師走

うすうすと紺のぼりたる師走空 飯田龍大

極月の山彦といる子供かな 細川加賀

年の暮

松原はつねの波音年の暮 日美清史

山の背に雲みな白し年の果 原裕

やまが山押して夜の来る年の暮 和田耕三郎

数へ日

数へ日や昼の木立に子の遊び 岡本眸

数へ日や一人で帰る人の群 加藤かな文

行く年

行く年や草の中より水の音 小島健

晦日

妻少し昼を眠りぬ小晦日 星野麦黍人

晦日

大年の夢殿に火のにほひかな 井上弘

年越

あをあをと年越す北のうしほかな 飯田龍大

寒の入

水光に順ふ水や寒の入 綾部仁喜

合掌の指やはらかく冬に入る 瀬間洋子

大寒

大寒の竹のこえきくゆふべなり 古賀まり子

水舐めるやうに舟ゆく寒九かな 鈴木太郎

冬の暮

斧一丁寒暮のひかりあてて買ふ 福田甲子雄

寒し

しんしんと寒さがたのし歩みゆく 星野立子

凍る

谷氷り日輪空の青とありぬ 石橋辰之助

冬深し

冬深し海も夜毎のいさり火も 八木絵馬

冬深し地を蹴って啼く鳥の声 井上康明

冬深し柱の中の波の音 長谷川櫂

日脚延び

日脚伸ぶ電車の中を人歩き 神蔵器

日脚伸ぶ亡夫の椅子に甥が居て 岡本眸

春待っ

春待っや一幹の影紺を引き 井沢正江