馬酔木第98巻第8号

人はこぶ列車八月十五日 鶴岡加苗

草市や風にとらるる灯をならべ 水原秋櫻子

打水や裾をからげて紺屋町 德田千鶴子

山梔子の香る一輪素焼壺 同上

この町にまだ住み倦かず時計草 渡邊千枝子

向日葵の野に落日のひかり充つ 根岸善雄

大瑠璃や荒瀬にかかる丸木橋 同上

手配書に漢ばかりの溽暑かな 橋本栄冶

そばかすを頬に散らして巴里祭 野中亮介

変身のできるバックル水鉄砲 同上

師宣忌茅花流しに裾濡らす 伊丹さち子

水無月の川波日々を縫ひゆけり 同上

ごきぶりを殺めし咽喉の乾きかな 那須淳男

充電の赤き灯ともす熱帯夜 同上

ソーダ水飲みてはじける恋心 同上

桟橋へ踏板架くる朝ぐもり 工藤義夫

梅雨月夜能面彫を深めけり ほんだゆき

遠河鹿枕の中もせせらげる 同上

水遣りしそばより売れて花菖蒲 小田司

浅蜊搔桶うつ潮になほ去らず 同上

はまゆふや舟に遅れて波の来る 中村房子

夕闇の襞の中より蚊喰鳥 中村房子

海の紺切り取る茅の輪くぐりけり 丹羽啓子

黒南風や雲梯に空揺らしつつ 同上

香水の封切って刻深くせり 丹羽啓子

鳴らしみるドロップの缶朝ぐもり 丹羽啓子