毬ひとつあれば遊ぶ子下萌ゆる 橋本栄治

両頬のまづふくらんで紙風船 野中亮介

花桃のひかりあふるる授乳室 工藤義夫

木蓮のはらりと月をはなしけり ほんだゆき

見て見ぬは共犯といふ寒さかな 長谷英夫

ほのかなる光をあつめ菜を洗ふ 島田万紀子

春泥を背まで跳ね上げ子ら帰る 松本幹雄

隠国の闇は天鵞絨おくれ雁 藤井明子

半跏座のをとこ仕立士風光る 同上

梅月夜かたはらに聴く子の寝息 太田昌子

乳離れの夜鳴き連れ出づ春の月 森藤千鶴

輝きの沖つ白波蝶生る 

艫綱の先を波間に二月尽 近藤暁代

海坂の沖白波を蝶こえ来

湧きつげる水の波紋や春立ちぬ

立春の湧きつぐ水の波紋かな

みくまりに湧きつぐ水輪春立ちぬ

碧潭に湧きつぐ波紋春立ちぬ

 心足る日は春眠の四肢伸ばす 

木彫師の入るる熊の目風光る

みほとけの伏目にをはす養花天

みほとけの伏目にをはす花曇

春眠のあと四肢伸ばす吾子ありぬ

絹の雨春眠の子に寄り添ひぬ

春眠に心たらひぬ四肢伸ばす

雲被く遠嶺北窓開きけり

立春の一刀彫の御仏や

海光をたたなふ春の波

光よりひかり織りなす春の波

光よりひかり生れぬ春の波

ひかりよりひかりつむぎぬ春の波

ひかり生む光ありけり春の浪

ひかりより光こぼしぬ春の浪