岡本眸ヲ悼む inamorato 抄 65句

邯鄲のひとこゑ勁し眸逝く

かりがねのひとこゑ激つ眸逝く

かりがねのひとこゑ勁し眸逝く

のひとこゑ勁し眸逝く

雁の遠つひとこゑ眸逝く

落雁のひとこゑ激つ春郎の忌

落雁の遠つひとこゑ春郎の忌

落雁のひとこゑ勁し春郎の忌

小牡鹿のひとこゑ激つ春郎の忌

小牡鹿のひとこゑ勁し春郎の忌

・鍵しまふ抽出すこし開けて秋 岡本眸

右足骨折後2か月で癒え近き頃。簡便な生活の日常の些事ながら、長い夏を経て、さわやかな秋。そのうえ快癒を重ねて、喜びを打ち出している。

鈴のごと星鳴る買物籠に柚子 岡本眸

雨を見て眉重くゐる紫蘭かな 岡本眸

夜は月の暈の大きく水温む 岡本眸

夏至の日の手足明るく目覚めけり 岡本眸

日は光ひかりは鳥や初景色 岡本眸

秋袷

・喪主といふ妻の終の座秋袷 岡本眸

花野来て夜は純白の夜具の中 岡本眸

霧冷や秘書のつとめに鍵多く 岡本眸

・春眠といふうす暗くほの紅く 岡本眸

・水にじむごとく夜が来てヒヤシンス 岡本眸

・春ショール 身軽すぎるは 不貞めく 岡本眸

初氷 夜も青空の 衰へず 岡本眸

遠き樹に ひと日風立つ 更衣(ころもがへ) 岡本眸

・卓に組む十指もの言ふ夜の秋岡本眸

○花は葉に巻けば細身の男傘 岡本眸

・秋ふかき目覚め鉄階使ふ音

・近すぎて自分が見えぬ秋の暮 岡本眸

祇王寺
枯木立 灯りのような 瞳と逢ひぬ 岡本眸

温めるも 冷ますも息や 日々の冬 岡本眸

・かまつかに思ひつづけて意志となる 岡本眸

・白玉や子のなき夫をひとり占め 岡本眸

・水すまし平らに飽きて跳びにけり 岡本眸

子に五月手が花になり鳥になり 岡本眸

/ちちははの忌をみどり濃き七月に 岡本眸

・炎昼のきはみの櫛を洗ひけり 岡本眸

掬ふたび冷さうめんの氷鳴る 岡本眸

・休暇果つ少女風視る目をしたり岡本眸

・衣かつぎ末に生まれて遺りけり 岡本眸

・踏台の紅い丸椅子冬支度 岡本眸

・喪の幕の端に風ある秋の蝉 岡本眸

・りんだうや机に倚れば東山 岡本眸

・掌の温み移れば捨てて烏瓜 岡本眸

・秋ふかき目覚め鉄階使ふ音 岡本眸

・疲れては睡り覚めては秋深し 岡本眸

・秋深むひと日ひと日を飯(いい)炊いて 岡本眸

・卓拭いて夜を切り上げるそぞろ寒 岡本眸

・冬めける髪をなだめて寝まりけり 岡本眸

・社会鍋横鍋ばかり通るなり 岡本眸

・巻き直すマフラーに日の温みあり  岡本眸

・しみじみとひとりの燈なる葛湯かな 岡本眸

・おでん屋に同じ淋しさおなじ唄 岡本眸

・夜焚火や闇より波の走り出づ 岡本眸

・渚なき海をさびしと目貼しぬ 岡本眸

/温もるは汚るるに似て風邪ごもり 岡本眸

・日向ぼこあの世さみしきかも知れぬ 岡本眸

・時雨忌やつかのまの星海に出て 岡本眸

・さみしさのいま声出さば鴨のこゑ 岡本眸

・あげ潮の舞を大きく冬かもめ岡本眸

・青木の実寡黙なるときわが血濃し 岡本眸

・水底の紅葉水面の冬もみぢ 岡本眸

・枯はちす月光更けて矢のごとし 岡本眸

・葱焼いて世にも人にも飽きずをり 岡本眸

・火を埋めるやうに日暮れて囲ひ葱 岡本眸

・をみなにも着流しごころ夕永し 岡本眸

・春驟雨花買ひて灯の軒づたひ 岡本眸

。水飲んで春の夕焼身に流す 岡本眸

・夜は月の暈の大きく水温む 岡本眸

・美しき冷えをうぐひす餅といふ 岡本眸

ゆく雲の北は会津や春田打 岡本眸

・初電車待つといつもの位置に立つ 岡本眸

。彼岸会の若草色の紙包 岡本眸

・畳目にまぎれて春の蚊なりけり 岡本眸

・こでまりや帯解き了へし息深く 岡本眸

・緋桃咲く何に汲みても水光り 岡本眸