永井荷風 断腸亭日乗 

薄暮中洲に往き小星(お歌)の病を問ふ。帰途二更の頃永代橋上に月の昇るを看る、月鳴のかなたに横雲のたな曳渡るさま清親*1の筆の如し s6.7.2

横雲のたな曳き渡る居待月

枯れ蘆の茂り梢まばらなる間の水たまりに、円き月の影杯を浮べたるが如くうつりしさま絵にもかかれぬ眺めなり 154 s7.1.22

枯れ蘆の月明に透くにはたづみ

「言問の岸に立ちて舟を待つ。日は既に没して暮潮静に岸を打つさま、水辺の興趣さすがに棄てがたきものあり。唖唖君世に在りし頃には、夏の夕暮屡(しばしば)相携へて此の渡頭に立ち、今日の如く水流を眺めしことなど想起して悵然たり(ちょうぜん、思い切れず恨めしい)」157 t15.7.9

菱咲くや岸打つ暮潮打ち返し