和歌山弁護士会・廣谷行敏先生 ひゅーん

 

法曹の仕事は人の生き様に触れることである。

http://mainichi.jp/area/wakayama/news/20150901ddlk30070550000c.html

天網恢々(てんもうかいかい)疎にして漏らさず−−。

 

 夏だからと言って、ホラーでもないのですが、私が司法修習生のころの担当教官はユニークな先生が多くいました。司法研修所の教官はエリートなのですが、刑事裁判担当教官(裁判官です)は、破天荒な人物で、裁判官が性に合わないのか、その後、退職し国際的な法律事務所に入られました。民事弁護担当教官は、数年前に最高裁判所の判事になられました。そのような教官ばかりだったからか、私の時代の教官の最終授業は、思い出話や自分の失敗談など、形は違いますが、我々修習生に対して法律家としての姿勢を伝えようとする内容でした。

 検察担当教官の最後の授業は、経験談を交えたものでした。その中で、今でも思い出すのが、「ひゅーん」の話です。教官が検察官として担当した事件で、自分の子ども(乳児)を殺して箱に詰めて押し入れに隠していた女性が逮捕されました。その女性は、引っ越しのたびにその乳児の死体の入った箱も新しい部屋に移し、押し入れに隠していたそうです。

 女性には、殺さなかった子ども(小学生)がいました。逮捕後、検察官が子どもの担任教師から連絡を受けて会ったところ、その子の作文を見せられました。その作文の題名が「ひゅーん」でした。そこには次のような話が書いてありました。

 僕の友達は、「ひゅーん」です。僕が学校から帰っても、お母さんは仕事のため、部屋にはいません。でも、いつも、「ひゅーん」が遊んでくれるので寂しくありません。でも、「ひゅーん」との約束で、「ひゅーん」のことは、お母さんには内緒です。そして、「ひゅーん」は、お母さんが仕事から帰ってくると、ひゅーんと、押し入れの中へ帰って行ってしまいます。僕は、「ひゅーん」が大好きです。

 さて、この話は、子どもを殺した母親の無意識の行動から、何かを感じ取った子どもが見た夢でしょうか? 天網恢々疎にして漏らさず