愛のむきだし 園子温

一言でいうと,「これが園子温だ」という作品。ブルーベルベット風に何でも詰め込んでみたという感じの実験作。私は全く評価しない。ていうか,嫌いだ。以下,嫌いな理由を述べる。*1私は,園監督の『冷たい熱帯魚』を人生のトップ5映画に上げるくらい好きだが,テーマを絞ったほうがいいよね。

テーマ・世界観

私がこの監督を評価しているのは,時間をかけて,自分は人の醜いところを描く作品を作りたいんだというのが明確に表れているパターン。そこに絞り込むのがよい。普通は多少とも醜い点はかくして生きていくわけだが,あえて人間が人間を嫌う部分を如実にデフォルメさえして提示する。この点が傑出していると評価している。

しかし,この作品は盛り込み過ぎで練れていない*2,実験作だ。サスペンスの入りからコメディ~ラブコメ~ミステリー~ヒーローものの大円団。ピントが合っておらず,残念。これをまとめるには力量不足でデヴィッド・リンチの素晴らしさがよくわかる笑。くどいが,テーマを絞るべき。

というと,愛のむきだしっていうテーマなんだよって言われると思うが,雑だろ。愛というマジカルワードで何でもかんでもごった煮にしやがってという怒りすら湧く。コリント13章とか,独白させるなんて,余韻も何もあったものではない。きわめてバタ臭く,なにもかもしゃべらせてしまう。深みがない。

都市の日常の中にこそ狂気が隠されているという世界観はこの後もこの監督に一貫した世界観でこの点は評価している。

キャラクター

ユウの父親。一定しないのが怖い。人間には一貫性を好む性質があるのだ。あえて超善人を描いて,その後に罪を認めろと迫る偏執狂への反転。

逃げるのは親の役割の放棄に他ならない。向き合ってこそ家族だ。この辺は紀子の食卓以来ぶっ壊れた家族を撮らせるとすごいほんと。外から見れば異常で滑稽ですらあるが,中の人達はそこにしかない絶対的な世界であり必死。デパルマの名作『キャリー』の親子を思わせる。どこかにある家庭かもしれないと観客に思わせるにはかなりの演技力が必要。ここは評価する。

ユウ。序盤。つきはなされて,狂信的になるのは仕方ない。そこしか世界がないし,愛しているのだから。

マリアコンプレックスが一貫しているが,それは変態でも愛という理屈で正当化されるの?ラストで「その後ユウとヨーコは幸せに暮らしました」となりますか。いや,どう考えても新たな不幸の始まりでしょう。

コイケ

宮刑が強烈過ぎて・・・全体に練りきれていない。深みにかけ,人生が見えてこない。

ヨーコ

ステレオタイプだが,一つの型としてはあり。透明の弾丸説は秀逸だと思った。また,カートだけが好きな男っていうのはパンクだね*3

コリント13章の独白は,シェイクスピア並の長いセリフで役者泣かせ。下手が露見するね。

ストーリー

 ・「この物語は事実に基づいている」はホラーのあおりとして最も最適だと何かで読んだ。たとえ虚構でも,感情移入できるからだろう。まあ,冷たい熱帯魚はしっかり実話ベースだけどさw

★なにより,ストーリーが気にくわない。

・何でもアリな感じが本当に嫌だな。闇鍋をおいしいと思う人は少数だ。ラブコメまでご丁寧にありがとうございます。

・最終章に入る直前,十字架を背負う家族と笑うコイケは雑だし,マリアを出したり,テロップを出したり不快。異化効果を狙うなら,観客に対し,どうして舞台を見ているのだと思わせるのか問題提起がいるだろう。あえて同化を阻害する点に演出上の疑問を抱かざるを得ない。

・何あのラストも。舐めているのという感じ。もっとオープンな終わらせ方もあるよね。

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*1:否定的意見でもここまでかけるのであればきっと評価が割れるんだろう,主題歌のゆらゆら帝国のように。無関心を抱いてしまう映画が一番つらい。まあ,ビールが嫌いならビールは飲まなければいい話だ。

*2:奇跡までのカウントダウンとか

*3:グランジだけどさw