平成25年度司法試験 環境法 第2問 再現

環境法第2問 

  1. 設問1  

1 Dの主張内容

 Dは本件空港申請許可処分取消訴訟において、①C側北陸上案のみを検討対象とし、複数案を検討しなかったこと、及び②本件事業実施区域への降雨等が海域に進出する場合の水質及び水量並びにそれによるサンゴ礁への影響を把握せず、結果の評価書への記載を怠ったことを処分の違法性として主張する。

2 手続の違法にすぎないか

確かに、取消訴訟の訴訟物は処分の違法性一般であり、環境影響評価(以下「アセスメント」)法は処分の適法性を担保する手続法に過ぎないともみえる。しかし、アセスメント法における考慮不尽や違法は、瑕疵あるアセスを前提として適正な配慮ができないことから、アセスメント法33条1項違反として処分の違法性を基礎づけるので、処分の違法性である、とDとしては主張する。

3 ①について

  1. まず、①の代替案不検討については、2009年当時は、アセスメント法14条1項7

号7号ロかっこ書き違反として主張することになる。

  1. しかし、同条項号は、あくまで「環境の保全のための措置を講ずるに至った検討の

状況」についての準備書作成を義務付けるに過ぎないから、既に場所の設置は決まった段階で、なぜその場所でやることになったかということを示すことを義務付けているにとどまり、事業自体の代替案検討までは求めていないと解される。

  1. したがって、Dとしては①についての考慮不尽の違法を設置許可取消処分の違法性と

して主張することはできない。

4 ②について

  1. 前提
  2. ②については、本件では、環境大臣の意見を受けたうえ(アセスメント法23条)、国土交通大臣はA県に対して、本件評価書についての環境保全の見地からの意見を書面により述べた(同法24条)。そのため、事業者Aに「前条の意見が述べられ」ている(同法25条1項柱書)。また、②は、水質及び水量並びにそれによるさんご礁への影響についての把握を求めるものなので、「対象事業の目的及び内容」の修正ではなく(同法5条1項)同法25条1項1号にあたらない。さらに、事業者の氏名及び住所等の修正(同法5条1項1号、14条1項2号ないし8号、21条2項ないし4号)ではなく同法25条1項2号にあたらない。したがって、同条項3号に該当し、Aは「当該事項の修正を必要とすると認めるとき」には、対象事業に係るアセスメントを行い、補正をする義務がある(同条2項)。そこで、本件は「修正を必要とすると認めるとき」といえるか。
  3. 「修正を必要とすると認めるとき」

  上記文言は概括的であり抽象性が高く、事業者に裁量が認められる。しかし、25条が評価書の再検討及び補正を求めている趣旨は、環境の保全の見地から述べられた意見を事業者が勘案し、自主的な対応をするように促す趣旨である。それゆえ、「修正を必要とすると認める」かについては、事業者はこの意見を重視して判断すべきである。

本件では、国土交通大臣は本件評価書についての環境保全の見地からの意見の中で、

本件事業実施区域への降雨及び流入水が海域に進出する場合の水質及び水量並びにそれによるさんご礁への影響について把握し、その結果を評価書に記載することが求められていた。そのため、この点についての意見は重く、「修正を必要とすると認める」べきである。

  1. したがって、Aには②を行う義務があった。にもかかわらず、Aはこれを怠ったと認められる。よって、Aにはアセスメント法25条1項3号、同条2項違反がある。

4 以上より、Dは本件空港設置許可処分の取消の違法性を基礎づけるため②を主張する。

  1. 設問2  
  1. 複数案検討に関する改正後の扱い
  1. そもそも、複数案検討のタイミングについては、①実施の決定の時点、②場所の決定

の時点、③建設方法の決定の時点がありうる。2011年改正前は③のタイミングで複数案を検討していたに過ぎなかった。

  1. これに対し、2011年に改正されたアセスメント法3条の2以下及びその後に改正さ

れた基本的事項では、「計画段階配慮事項」として(3条の2第3項)、位置等に関する複数案の検討をするとされた(資料1第一、一、(3))。これは、②のタイミングでの複数案検討を義務付ける扱いである。

  1. その趣旨
  1. アセスメント法は、環境の保全(環境基本法<以下「基本法」>1条3条)及び規制的手

法だけでは対応しきれないため、受容可能な範囲に環境を保持するという環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築(基本法4条)の実現のため、科学的かつ民主的手続きに従い、個別の事業との関係で最適解を模索し、自主的対応を促し、生命・身体・健康等重要な法益への未然防止を図る(基本法4条)趣旨の法律である。

  1. 2011年改正もまた、未然防止を図り、持続可能な発展可能な社会を構築する趣旨で、②段階でのアセスメントを行うことを定める趣旨の改正だったと評価できる。

第3設問3

1 小問(1)

  1. 2011年のアセスメント法改正によって導入された仕組みは、生物多様性基本法(以下

法名略)25条、附則2条に及ばないという関係にある。

  1. 25条は「計画の立案の段階から」アセスメントを実施することを定めている。これ

は、①実施の決定の時点でのアセスメントの実施であり、個別の事業の実施に枠組みを与えることになる上位の計画、政策を対象とするアセスメントとしての戦略的アセスメントを規定していると評価できる。これはアセスメント法の持続可能性を保つための未然防止という趣旨に合致するものである。

(3) これに対し、2011年改正によって導入されたアセスメント法3条の2以下の仕組みは②段階でのアセスメントに過ぎない。そのため、戦略的アセスメントとは評価できず、事業実施の直前の手続であるため、問題が指摘されても事業計画の大幅な変更は困難である。したがって、①段階でアセスメントを行うより未然防止的でなく、持続可能性の保持に適さない。

(4) よって、2011年のアセスメント法改正によって導入された仕組みは、生物多様性基本法(以下法名略)25条、附則2条に及ばないという関係にある。

2 小問(2)

  1. 2011年改正アセスメント法3条の2以下の仕組みは、基本法20条の枠内にあると位

置づけることができる。同法20条は「事業の実施に当たり」と定めており、あくまで実施を決定した上で、位置についての決定段階でアセスメントをする②段階でのアセスメントだからである。

  1. これに対して、25条が想定するアセスメントの仕組みは、基本法19条の枠内に位置

づけられる。同条は「環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定」する段階で「環境の保全」について配慮することを定めている。これは行政の配慮義務に従って、①段階で、「環境の保全」あるいは「持続可能な社会の構築」という環境法の目的を達するため(基本法1条3条4条)、未然防止を図る仕組みといえるからである。

以上

 

 

 [O1]JELFがここに張っていたな、という第一印象。

 

 [O2]設問1が1.5枚、2が1枚、3が1.5枚計算だった。設問1で2枚つかっでしまったので、紙幅的に書ききれない恐れが生じた。したがって、説問2は抑えて書いた。