緑蔭や深きねむりの乳母車 緑蔭やねむり寧けき乳母車 緑蔭やすがる子あれば高く抱く たんぽぽのわた吹けば子のふきかへす

林泉の遠き音や椎拾ふ吾子 林泉の遠き音や子と椎拾ひ 林泉に椎拾ふ子の遠さかな

吾子抱くとゆず湯の柚子を溢れしむ 抱き入るる吾子や菖蒲湯溢れしむ 抱く吾子に柚子湯のゆずの溢れ落つ 抱く吾子にゆず湯の柚子の溢れけり

滑り台

蒲公英や吾子の声降るすべり台 鶯や子の足揃ふすべり台 鶯や足より滑るすべり台 秋晴やすべり台より声の降る 若芝やすべり台より声の降る

妻の手を振り切る吾子や青蛙 青桐や追いかけつこの吾子捕らへ 後ろより吾子に抱きつく草の花 うしろより吾子抱きかかふ草の花 青桐やおいかけつこの子に触るる 青桐や追ひかけつこの子に触れて

20190406高田風信子逝く

・遠山に雪のまだありチューリップ 高田風信子 ・空を航くごとく船見え磯遊 高田風信子 ・左義長の火の入る前の星空よ 高田風信子 ・熱燗や恐妻家とは愉快なり 高田風信子 ・いろいろな色に雨ふる金魚草 高田風信子

『論語』

子曰く「徳の修まらざる、学の講せざる、義を聞きて徒るあたはざる、不善を改むるあたはざる、これ吾が憂ひなり」 『論語』述而篇 孔子は言った「德が身についていないのではないか。学問を怠りはしなかったか。正しいことと知りながら実行しなかったのでは…

菜根譚 前集 第52条

恩を施す者は、内に己を見ず、外に人を見ざれば、 即ち斗栗も万鈔の恵みに当たるべし *1 *1:見返りを期待してはならない

たたかひのいろにカンナの燃え立ちぬ いにしへの戦のごとくカンナ燃ゆ。 いにしへの戦のいろにカンナ燃ゆ。 いにしへの戦火を蔵すカンナかな。

木蓮のむらさき翳る祇王の忌 花桐のむらさき翳る多佳子の忌 遠雷の翳を伴ふ多佳子の忌 多佳子の忌大和三山雷火立つ 薔薇剪れば空燃え立ちぬ多佳子の忌 剪り了へし薔薇横むきや多佳子の忌 時鳥暁天に幾谺しぬ 妻の手を子の離れゆく雨蛙 一鋏に薔薇のくれなゐ…

息白し面外しゆく無言劇 笑尉の面より洩るる息白し 舞尉の面より洩るる息白し 皺尉の面より洩るる息白し 黙劇の道化師笑ふ息白し 仕手舞の面を漏れくる息白し 息白し仕手舞の面洩るるより 仕手舞の尉面洩るる息白し 仕手舞の鬼神面より息白し

安井曽太郎

自画像 焼岳 形を具(そな)えて、さかえゆく生命(いのち)は、時にも、力にも、砕かれはしない。 ゲーテ

雨蛙

夢殿の白砂緊りぬ雨蛙 雨蛙夢殿秘仏匂ひ出づ 省くもの省かざるもの青蛙 省かざるものこゑのみぞ青蛙 夢殿の白砂緊りぬほととぎす 夢殿の白砂緊りぬ時鳥 ほととぎす夢殿秘仏匂ひ出づ

都井岬・日向灘

見通しの悪しき伝へつ鵙高音 灘深く馬肥ゆる岬牧水忌 岬端に馬肥ゆるなり牧水忌 都井岬の馬駆け抜けぬ牧水忌 都井岬の馬駆け寄らず牧水忌 岬端に馬駆けゆけり牧水忌 岬端に馬相寄らず牧水忌 岬端の馬相寄らず牧水忌 馬肥ゆる岬端蒼し日向灘 秩父町出はづれ来…

熱の子のしがみつく手や一茶の忌 熱の子の手にしがみつく霜夜かな 熱の子の手にしがみつくならひかな 熱の子の手にしがみつく暮雪かな 熱の子のしがみつく手や菜種梅雨 熱の子のしがみつく手や夜の新樹 熱の子の手にしがみつく緑雨かな 熱の子の手にしがみつ…

オルゴールの手廻しの音の暖かし 水原春郎 五月来ぬ手廻しの子のオルゴール 初夏や手廻しの子のオルゴール 白南風や手廻しに子のオルゴール 薫風や手廻しの子のオルゴール 白南風や子の手廻しのオルゴール 白南風や子に手廻しのオルゴール 薫風や子は手廻し…

久保守

バイオリニスト マジョリカのけし 旅愁

春郎忌

春郎の忌蒼龍淵に潜みけり 蒼龍の淵に潜みつ春郎の忌 蒼龍の淵やすらかに潜みけり 春郎忌の蒼龍淵に潜むなり 春郎の忌蒼龍淵に潜みをり 春郎忌の蒼龍淵に潜みたり 春郎忌や蒼龍淵に潜みつつ 月明に炎立つ銀杏の散りにけり 春郎忌の白炎として銀杏散る 春郎忌…

寝冷子に牛乳あたためてやりぬ 寝冷子のホットミルクを飲み干しぬ ぬくもりの牛乳を飲む寝冷の子 金魚玉訴訟資料を写しをり 金魚玉訟廷日誌写しをり 金魚玉六法全書写しをり 旱梅雨敗訴判決受け取りぬ 読初や手擦れなきわが法律書

朝刊を投げ込む音の涼しさよ

根岸善雄 『青渦』

夕波のしらじらとある単帯 根岸善雄 雪林の日より幽かに啄木鳥こだま 同上 雪嶺の月夜は離ればなれ峙つ 同上 過ぎてまた忌を待つおもひ梅二月 同上 そのあとを光が降れり竹落葉 同上 八朔の目覚め青渦ながれけり 同上 河豚食うてかすかに夜半の耳朶ほてる 同…

私の好きなフリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェの言葉たち

重大なのは永遠の生ではない,永遠に溌剌たる生気だ 『善悪の彼岸』 狂気は個人にあっては稀有である。しかし、集団・党派・民族・時代にあっては通例である 人間は未確定の動物である。人間が猿から由来したというには、猿はあまりにも善良である。 『ツア…

烏賊釣火闇あらたしくなりにけり 牡丹焚闇あらたあしくなりにけり 狐火に闇あらたしくなりにけり 太虚より闇の降りくる牡丹焚 根岸善雄

罪障のふかき寒紅濃かりけり 鈴木真砂女 蟻地獄赤子に智慧の生れけり 田中裕明

湯ノ湖

石楠花や遠嶺の奥に遠嶺聳ち石楠花や碧譚に手を浸したる石楠花や木の根を踏めば瀬の早み 行く春の故山の奥の故山かな 葉桜や故山の奥に故山聳つ

菖蒲風呂蒙古斑より洗ひけり 菖蒲湯や蒙古斑より洗ひやり 菖蒲湯や蒙古斑より吾子洗ひ

焼岳の雲やけ残る紫蘭かな

えご散ると夜空は雲を鏤めぬ えご散ると夜空は雲をちりばめぬ

露の大地子の手わが手のなかに小さし 古沢太穂 手の中に吾子の手小さし初幟 手の中に吾子の手小さし夏木立 手の中に吾子の手小さし日向水 手の中に吾子の手小さし遠花火 手の中に吾子の手小さし浮ひて来い 手の中に吾子の手小さし小判草 手の中の吾子の手小…

木をゆさぶる子がゐて夏の家となる 津田清子 一切の無常なるものは影に過ぎない ゲーテ 若竹を揺る子夕影濃くなりぬ 若竹を揺る子に空の青さかな 今年竹空のあをさに揺りにけり 若竹を揺るや青空あをまさる 若竹を揺る子や雲の生れつぎ 雲生れつぐや子の揺る…