「自分の感受性ぐらい」茨木のり子

ぱさぱさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな みずから水やりを怠っておいて 気難しくなってきたのを 友人のせいにはするな しなやかさを失ったのはどちらなのか 苛立つのを 近親のせいにするな なにもかも下手だったのはわたくし 初心消えかかるのを 暮…

西郷隆盛

地は高く、山は深く 夜は静かに 人声は聞こえず ただ空を見つめるのみ

『玩具のない子が』  金子みすゞ

玩具のない子が さみしけりゃ、 玩具をやったらなおるでしょう。 母さんのない子が かなしけりゃ、 母さんをあげたら嬉しいでしょう。 母さんはやさしく 髪を撫で、 玩具は箱から こぼれてて、 それで私の さみしいは、 何を貰うたらなおるでしょう。

北原白秋 落葉松

一 からまつの林を過ぎて、 からまつをしみじみと見き。 からまつはさびしかりけり。 たびゆくはさびしかりけり。 二 からまつの林を出でて、 からまつの林に入りぬ。 からまつの林に入りて、 また細く道はつづけり。 三 からまつの林の奥も、 わが通る道は…

シャルル・ボードレール

詩の原理とは 厳密にそして簡潔に言えば ある高度な「美」への人類の憧れであり この原理が明らかにされるのは 魂の感激 興奮においてなのだが 感激と言っても 心の酔いである情熱や 理性の餌である真実などから 完全に独立したものなのである。「エドガー・…

川本皓嗣『日本詩歌の伝統』

詩的文体の基本的文体は、誇張と矛盾である。

竹原ピストル 「RAIN」 「LIVE IN 和歌山」

竹原ピストル「RAIN」 「LIVE IN 和歌山」 特に「LIVE IN 和歌山」推し。

サクラローレル死去。 「桜だ、桜」

1996 天皇賞(春)

『葛の松原』支考 名句のできるとき

芭蕉庵の翁、一日たふえん*1としてうれふ。曰く「風雅の世に行われたる、たとへば片雲の風に臨めるがごとし。一回(ひとたび)は走狗(((黒い犬))となり、一回は白衣となつて、共にとどまる処をしらず。かならず中間の一理あるべし。」とて、春を武江*2の北に…

どれにも日本が正しくて夕刊がばたばたたたまれてゆく 栗林一石路 どのみちも雪道となり暮れゆくや 棟方志功 頸ほそき坑夫あゆみくるそのうしろ闇にうごきゐる沼とおもへり 石牟礼道子 われはもよ 不知火をとめ この浜に いのち火焚きて 消えつつまた燃へつ …

ジャン・コクトー

私の耳は貝の殻 海の響を懐かしむ

リルケ

各人に固有の死を与えたまえ 彼がそこで愛と意義と苦しみを持った あの生のなかから生まれでる死を

北原白秋 桐の花・聴けよ妻ふるもののあり 

短歌は一箇の小さい緑の古宝玉である、古い悲哀時代のセンチメントの精エツキスである。古いけれども棄てがたい、その完成した美くしい形は東洋人の二千年来の悲哀のさまざまな追憶おもひでに依てたとへがたない悲しい光沢をつけられてゐる。その面には玉虫…

円谷幸吉の遺書

父上様 母上様 三日とろろ美味しゅうございました 干し柿、もちも美味しゅうございました 敏雄兄、姉上様、おすし美味しゅうございました 勝美兄姉上様、ぶどう酒、リンゴ美味しゅうございました 巌兄姉上様、しそめし、南ばんづけ美味しゅうございました 喜…

サムエル・ウルマン 青春の詩

青春とは人生のある期間ではなく、心の持ち方をいう。薔薇の面差し、紅の唇、しなやかな肢体ではなく、たくましい意思、豊かな創造力、炎える情熱をさす。青春とは人生の深い泉の清新さをいう。青春とはきょうだを退ける勇気、安易を振り捨てる冒険心を意味…

三橋鷹女 第四句集『歯朶地獄』自序

一句を書くことは 一片の鱗の剥奪である

中原中也 『山羊の歌』「羊の歌」

汽車の笛聞こえもくれば 旅おもひ、幼き日をばおもふなり いなよいなよ、幼き日をも旅をも思はず 旅とみえ、幼き日とみゆものをのみ

雪              三好達治

太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。 次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。

甃〔いし〕のうへ    三好達治

あわれ花びらながれ をみなごに花びらながれ をみなごしめやかに語らひあゆみ うららかの跫音(あしおと)空にながれ をりふしに瞳をあげて 翳(かげ)りなきみ寺の春をすぎゆくなり み寺の甍(いらか)みどりにうるほい 廂々(ひさしひさし)に 風鐸(ふう…

伊香保の道行きぶり 油谷倭文子

かなたの嶺は墨を磨りかけたる様にて、雲のまよふこそ物おそろしけれ。

吉野詣記 三条西公条

昨日も山中野火ところどころ見えし。今日はまた大きなる木焼けて、折りかへりたる中より炎あがれり。右は山、左は深き谷。足もとにも火燃えける木の下を通れる。

三好達治 乳母車

母よ 淡くかなしき もののふるなり紫陽花いろの もののふるなり 母よ私は知っているこの道は 遠く 遠くはてしない道

そして詩が本質する精神は、この感情の意味によって訴えられたる、現在(ザイン)しないものへの憧憬である。 引用元は、萩原朔太郎『詩の原理』。青空文庫にもあります。 短歌が人を感動させるために必要な要素のうちで、大きなものが二つあると思う。それ…

穂村弘『短歌といふ爆弾』

あれはまちがいだった。あれはまちがいだった。世界を変えるための呪文を本屋で探そうとしたのはまちがいだった。どこかの誰かが作った呪文をもとめたのは間違いだった。僕は僕だけの、自分専用の呪文を作らなくては駄目だ。

正岡子規 墨汁一滴

昨夜の夢に動物ばかりたくさん遊んで居る処に来た。その動物の中にもう死期が近づいたころげまわって煩悶している奴がある。すると一匹の親切な兎があってその煩悶している動物の辺に居て自分の手を出した。かの動物はすぐにうさぎの手を自分の両手でもって…

ヴィトゲンシュタイン

1 世界は起こっていることの総体である。 2 起こっていること、すなわち事実とは、事態(事柄)が成立するということである。 3 事実の論理的像が思考である。 4 思考とは意味を持つ命題である。 5 命題は要素命題の真理関数である。 6 真理関数の一般…

アンドレ・ジッド集成1 二宮正之訳 を読む 地の糧

明日を夢見ることは一つの歓びだ。しかし明日の歓びは別の歓びだ。そして幸いにして、何ものも人が夢に描いたそれにはにていない。なぜなら、それぞれのものに価値があるのはまさにことなっていればこそなのだから。 それはよかった、と言えないときには、ま…

アンドレ・ジッド集成1 二宮正之訳 を読む アンドレ・ヴァルテールの手記

www.chikumashobo.co.jp 初期の作は特に断片的な傾向だが、その実、ジッドの生涯を貫くテーマが特に、『アンドレ・ヴォルテールの手記』に表出している。訳は少しつたない印象がある。個人的には『ぬた』のような作風は好むが、後に繋がる清教徒的、西洋文化…

永井荷風 断腸亭日乗 

薄暮中洲に往き小星(お歌)の病を問ふ。帰途二更の頃永代橋上に月の昇るを看る、月鳴のかなたに横雲のたな曳渡るさま清親*1の筆の如し s6.7.2 横雲のたな曳き渡る居待月 枯れ蘆の茂り梢まばらなる間の水たまりに、円き月の影杯を浮べたるが如くうつり…

風を切ってなぜに僕らは急ぐ 冷たい風のなかほんのり甘く