和歌

月包む雲の明るし盂蘭盆会 かりがねは空ゆくわれら林ゆく 寂しかりけるわが秋もゆく 吉井勇

美瑛・富良野

十勝連峰 十勝岳 麦秋や雲払ひ立つ十勝岳 玫瑰や雲払ひ立つトムラウシ山 ポプラ並び立つ馬鈴薯の花明り 馬鈴薯の花の中なるポプラ聳つ 郭公のこゑ遠くなる十勝岳白樺 麦秋の丘畳なはる地平線 麦秋の丘横たへて地平線 麦秋の丘連ねたる地平線

吉井勇

今週のお題「わたしの好きな歌」 かにかくに 祇園はこひし寝(ぬ)るときも 枕のしたを水のながるる 吉井勇されば彼を畏敬して歌ふなり。かにかくに宵の明るき白川の勇忌近きかえるで匂ふ かにかくに宵の明るき川音の勇忌近き北山時雨 かにかくに宵の明るき…

今週のお題「わたしの好きな歌」 白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ 若山牧水 共鳴している。ある意味、息の合った対局というのも歌だとおもう。live.shogi.or.jp

都井岬・日向灘

見通しの悪しき伝へつ鵙高音 灘深く馬肥ゆる岬牧水忌 岬端に馬肥ゆるなり牧水忌 都井岬の馬駆け抜けぬ牧水忌 都井岬の馬駆け寄らず牧水忌 岬端に馬駆けゆけり牧水忌 岬端に馬相寄らず牧水忌 岬端の馬相寄らず牧水忌 馬肥ゆる岬端蒼し日向灘 秩父町出はづれ来…

日のいまだ高き菖蒲湯沸きにけり 山崎ひさを ソーダ水つつく彼の名出るたびに 黛まどか 山雲のうつろひ遅し樫の花 山雲のうつろひ遅し萩若葉 鼻に水滴る牛を冷しけり 眠たさにうなじおとなし天瓜粉 水原秋櫻子 尻尾振りながら水牛冷さるる ホースより牛の額…

西行

花さへに世をうき草になりにけり 散るを惜しめばさそふ山水

西行

波にやどる月をみぎはに揺り寄せて鏡にかくる住吉の月渚まで波間の月を揺り寄せぬ 月宿す波を渚に揺り寄せぬ。漕ぎ出でて波間の月を揺り寄せぬ 月宿す波揺り寄するオールかな 月影の波引き寄する 夜振の火波間の月を揺り寄せぬ 鵜飼舟波間の月を揺り寄せぬ曇…

西行

津の国の難波の春は夢なれや 葦の枯葉に風渡るなり宮柱下つ岩根に敷き立てて つゆも曇らぬ日のみ影かな子はやはらかしあたたかし 摘草や吾子やはらかくあたたかく 子は柔らかしあたたかしぱたぱたと奇声をあげて笑ふ生き物 柔らかきあたたかき吾子ころばしぬ…

西行

籬(ませ)に咲く花にむつれて飛ぶ蝶の羨ましくもはかなかりけり初蝶の間垣にもつる西行忌空にいでていづくてもなく尋ぬれば雲とは花の見ゆるなりけり散る花を惜しむ心やとどまりてまた来ん春のたねになるべきとくとくと落つる岩間の苔清水 汲みほすほどもな…

在原業平

世の中に絶えて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし忘れては夢かとぞ思ふおもひきや 雪踏み分けて君を見んとは感情が溢れて言葉の流に身を任せる。そういう歌ほど美しいのだから矛盾している。(略)どのようにも解釈できるし、読むひとの心次第で、どこ…

西行

春風の花を散らすと見る夢はさめても胸のさわぐなりけり青葉さへ見れば心のとまるかな 散りにし花の名残と思へばいにしへを恋ふる涙の色に似て袂に散るは紅葉なりけり芹摘むと嵯峨に風立つ西行忌 夢覚めて胸騒ぐなり西行忌 西行忌花散る夢に醒めてより モノ…

葉隠の越後三山ボート干す 稚児閉ぢし目の上に紅差しにけり祇園囃子の笛の高鳴り ひかりよりひかりをつむぐ春の波 ひかりより光をつむぐ春の波 初風呂や花束のごと吾子を抱き 稲田眸子 木彫師の鑿の瓏銀風光る 木彫師の銀鼠の鑿風光る 木彫師の瓏銀の鑿風光る

陰日向に咲く

草陰の小さき朱きチューリップ踏まれふまれてなほ咲きにけり

祇園祭

閉ぢし目に朱を引き直す鉾の稚児 眦に朱を差し直す鉾の稚児 眦に紅差し直す鉾の稚児 まなぶたに紅差し直す鉾の稚児 まなぶたに朱を引き直す鉾の稚児 祇園会の稚児閉ぢし目の上に朱を引き直すなり笛の音高く 祇園会の稚児閉ぢし目の上に朱を引き直すより人い…

阿佐緒忌の妻の黒髪掻ひ撫づるくちなはのごと指にまつはる阿佐緒忌の妻の黒髪掻ひ撫でつくちなはのごと指にまつはる阿佐緒忌の妻の黒髪掻ひ撫でぬくちなはのごと指にまつはる阿佐緒忌の妻の黒髪掻き撫でぬくちなはのごと指にまつはる赤城嶺の影の上なる花筏 …

そして詩が本質する精神は、この感情の意味によって訴えられたる、現在(ザイン)しないものへの憧憬である。 引用元は、萩原朔太郎『詩の原理』。青空文庫にもあります。 短歌が人を感動させるために必要な要素のうちで、大きなものが二つあると思う。それ…

短歌

「さかさまに電池を入れられた玩具の汽車みたいにおとなしいのね」穂村弘 のど赤き玄鳥ふたつ屋梁(はり)にゐて垂乳根の母は死にたまふなり 斎藤茂吉 沖かけて燕まぶしき茂吉の忌

穂村弘『短歌といふ爆弾』

あれはまちがいだった。あれはまちがいだった。世界を変えるための呪文を本屋で探そうとしたのはまちがいだった。どこかの誰かが作った呪文をもとめたのは間違いだった。僕は僕だけの、自分専用の呪文を作らなくては駄目だ。

子はいつもはつらつとしてよろこびにからだふるはす愛し生き物 奥村晃作 菖蒲湯やからだふるはし吾子笑まふ

短歌入門 決定版

素材の選択は思想 戦前 母のくににかへり来しかなや炎々と冬濤圧して太陽沈む 坪野哲久 戦後 大空の斬首ののちの静もりか没ちし日輪がのこすむらさき 春日井建 短歌は事実で無いことを詠んでもよいのですか? 窪田空穂は、事実を詠んだ歌なんてどこにもあり…

雲を置く嶺へ北窓開け放つ 雲被く嶺へ北窓開け放つ 初音より岳麓の闇ゆるびけり 薪割る斧置き拭ふ玉の汗はろけき嶺に心とどめん 杣小屋に薪割りし斧立て掛けつはろけき嶺に心置くなり

神戸

坂の上の洋館ひかる花ミモザ まなかひに漣明り風光る まなかひにさざ波明り燕来る まなかひのさざ波明り燕来る 茂吉忌の空曳きてくる燕かな 茂吉忌の光曳きくるつばくらめ 茂吉忌の空よりひかり曳く燕 茂吉忌や空よりひかり曳く燕 茂吉忌の山河のひかり曳く…

阿佐緒忌の妻の黒髪撫で下ろすくちなはのごとまつはりにけり

阿佐緒忌の妻の黒髪櫛るくちなはのごと手に絡みつく 阿佐緒忌の妻の黒髪手にすくとくちなはのごと絡みつくなり 阿佐緒忌の妻の黒髪撫で下ろすくちなはのごと指にまつはる

阿佐緒忌の妻の黒髪撫づるなりくちなはのごと手に絡みつく 阿佐緒忌の妻の黒髪撫で下ろすくちなはのごと手に絡みつく

ゆく雁に泪ありせばみちのくの渚に拾ふ桜貝かも

かも

ゆく雁になみだありせばみちのくの掌に享く桜貝かな ゆく雁になみだありせばみちのくの掌に享く桜貝なり ゆく雁になみだありせばみちのくの掌に享くこの桜貝 ゆく雁になみだありせばみちのくの渚に拾ふ桜貝なむ

正岡子規

病みこやす閨のガラスの窓の内に冬の日さしてさち草咲きぬ 鶏頭の黒きにそそぐ時雨かな 秋の蠅叩き殺せと命じけり 懐炉冷えて上野の闇を戻りけり つり上げし魚の光りやあたたかき 律院の苔の光や春の雨 髭剃るや上野の鐘の霞む日に 糸瓜咲て痰のつまりし仏か…

永井荷風 断腸亭日乗 

薄暮中洲に往き小星(お歌)の病を問ふ。帰途二更の頃永代橋上に月の昇るを看る、月鳴のかなたに横雲のたな曳渡るさま清親*1の筆の如し s6.7.2 横雲のたな曳き渡る居待月 枯れ蘆の茂り梢まばらなる間の水たまりに、円き月の影杯を浮べたるが如くうつり…