俳句

俳句歳時記第五版冬地理

水涸る 水涸るや廻ればにほふ糸車 吉本伊知朗 冬の水 命あるものは沈みて冬の水 片山由美子 寒の水 寒の水こぼれて玉となりにけり 右城暮石 冬の川 冬の川薄き光が流れゆく 佐藤喜仙 冬の波 冬の浪炎の如く立ち上り 上野泰 冬の浪よりはらはらと鵜となりて …

魚沼・十日市

落石の遠き残響山枯るる 豺狼を祭る、狼の祭、豺の祭 落石に立つ豺の祭かな 影を踏むごと狼の祭かな 月影に立つ狼の祭かな 月影を踏む豺の祭かな 月を踏むごと狼の祭かな 月を衝くごと狼の祭かな 月躙るごと狼の祭して 風を踏むごと狼の祭かな 断崖に立つ狼…

立冬の日に透し買ふ飴細工 立春の日に透し買ふ飴細工 行く秋の日に透し買ふ飴細工 行く秋の日に透し撰る飴細工 行く秋の日に透かし買ふ飴細工 行く秋の日に透かし撰る飴細工

草木より音の立つなり秋しぐれ 秋しぐれ吾子踏む草に音のして 足もとに雨の匂ひや一の酉 足もとに雨の匂ひや十夜鉦 足もとに雨の匂ひやクリスマス 足もとに雨の匂ひや花アロエ 足もとに雨の匂ひや亜浪の忌

鳩吹や木蔭重なる雑木山 秋蒔や木蔭重なる雑木山 冬凪の波止の塩焼く煙かな 冬凪の岬の塩焼く煙かな

松の葉に月はゆつりぬ黄葉葉の過ぐれや君が逢はぬ夜の多き 池辺王(巻4・623)

松の葉越に月は渡っていくし、おいでをまったあげくにいつしか月も変わってしまった。まさかあのh世へいったわけでもあるまいのに、あなたの逢いに来ぬ夜が重なること、かさなること。 松の葉を月渡りゆく神無月 松の葉を月渡りゆく初冬かな 松の葉を月渡り…

蘆辺より満ち来る潮のいや増しに思へか君が忘れかねつる 山口女王(巻4/617)

葦原のあたりを満ちて来る潮のように、君を思う気持ちがひたひたと心の底に募るせいか、あのお方のことが忘れようにも忘れられない 葦原を満ち来る潮や夏旺ん

立冬や手を添へて置く涙壺 初冬や手を添へて置く涙壺

俳句歳時記 冬 第五版 時候

淵なれば散りて流れずもみぢ葉のふちの底ひに朽ちて沈めり 生方たつえ 子持嶺の岩山かげゆ取りて来し松藤入れて風呂立てにけり 倉沢誠一郎 冬 聖堂の木の香奪はれつつ冬へ 広瀬直人 初冬 初冬の木をのぼりゆく水のかげ 長谷川双魚 水に靄動きはじめて初冬か…

縄の浦に塩焼く煙夕されば行き過ぎかねて山にたなびく 日置少老(巻3・354)

夕凪や塩焼く煙たなびける 夕凪の瀬戸の塩焼く煙かな 夕凪の入り江塩焼く煙かな 夕凪の瀬戸に塩焼く煙立つ 藻塩焼く煙たなびく土用凪

みもろの 神なび山に 五百枝(いほへ)さし 繁(しじ)に生ひたる 栂の木の いや継ぎ継ぎに 玉葛(たまかずら) 絶ゆることなく ありつつも やまず通はむ 明日香の 古き都は 山高み 川とほしろし 春の日は 山し見が欲し 秋の夜は 川しさやけし 朝雲に 鶴(た…

さざれ波磯越道なる能登瀬川音のさやけさたぎつ瀬ごとに 波多朝臣小足(巻3/314)

小波(さざなみ)が川岸の岩を越すというではないが、越の国へ行く道の能登瀬川、この川の音のなんとさやかなことよ。激ち流れる川瀬ごとに。 激つ瀬に岩打つ波のさやけしや

りんどう湖

そぞろ寒眠る子の顔我に似つ連嶺の朝靄隠れ蘆を刈る水底に波打つひかり鰍突く 水底に波打つひかり下り簗 ひつじ田や光あつむるにはたづみ みづうみの遠き帰燕となりにけり 水底に波打つひかり簗を打つ 水底に波打つひかり岩魚焼く 見えぬ目の子犬の乳ぜる花…

峡の日の峡にとどまる紙を漉く 峡の日の峡を出でずや紙を漉く 紙漉や木蔭重なる雑木山 峡の日のかがやふ影や紙を漉く

火口湖を夜雲おほひぬ十三夜 スポンジの戻らぬ窪みそぞろ寒 カステラの刃先に倒れそぞろ寒 包丁にうつろふ光そぞろ寒 おほぞらに風透りたる花野かな

天涯の切先濡るる草雲雀 天涯の底濡らしゆく草雲雀 暁闇の底濡らしたる草雲雀 暁闇の底滴らす草雲雀 天涯の底滴らす草雲雀 天涯の底滴れり草雲雀 可惜夜の底滴らす草雲雀 可惜夜の底濡らしゆく草雲雀 邯鄲の夜の底ひに風と鳴く 邯鄲の夜を踏むやうに鳴き継げ…

燃ゆる火も取りて包みて袋には入ると言はずやも智男雲 持統天皇(巻2:160)

嬬恋の草凪ぎわたる焚火かな

鯨魚取り 近江の海を 沖放(さ)けて 漕ぎ来る船 辺(へ)付きて 漕ぎ来る船 沖つ櫂 いたくな撥ねそ 辺つ櫂 いたくな撥ねそ 若草の 夫の 思ふ鳥立つ 倭大后(巻2・153) 若草や近江の海を鳥翔り

橘の蔭踏む道の八叉に物をぞ思ふ妹に逢はずして 三方沙弥(巻2/125)

橘の木蔭踏みゆく去来の忌 橘の木蔭踏みゆく西鶴忌 橘の木蔭踏みゆく宗祇の忌

在り嶺よし対馬の渡り海中に幣取り向けて早帰り来ね 

在り嶺よし対馬は碧き月宿す 在り嶺よし対馬を春の霙かな

筑波嶺にかが鳴く鷲の音のみをか鳴き渡りなむ逢ふとはなしに 東歌(巻14/3390)

筑波嶺にかが鳴く鷲や宗祇の忌 筑波嶺にかが鳴く鷲の音のみをか 筑波嶺や鷲のかが鳴くわが而立

相(あふ)坂をうち出でて見れば淡海の海(み)白木綿花(しらゆふはな)に浪たちわたる 詠み人知らず(巻13/3238)

阿佐緖忌の妻の黒髪搔ひ撫でつくちなはのごと指に纏はる 坂よりの湖の白浪蝉丸忌 みづうみに波立ちわたる蝉丸忌 みづうみをわたる白波蝉丸忌 立ち渡る湖の白波蝉丸忌

紫草(むらさき)を草と別く別く伏す鹿の野は異にして心は同じ 詠み人知らず(巻12・3099) 

鹿啼くと野は紫に匂ふなり 鹿のこゑ野のむらさきに匂ふなり 鹿のこゑ紫に野の匂ふなり むらさきに野の匂ふなり夜の鹿 むらさきに野の香り立つ夜の鹿 紫に野の香り立つ夜の鹿 むらさきに野の匂ひ立つ夜の鹿 夜の鹿野の紫に匂ひ立つ 鹿のこゑ野のむらさきに匂…

窓ごしに月押し照りてあしひきの嵐吹く夜は君をしぞ念ふ 詠み人知らず(巻11/2679)

窓ごしに押し照る二十三夜月 みづかげの𨗉き水草紅葉かな みづかげの重き水草紅葉かな みづかげを迅き水草紅葉かな

難波人葦火焚く屋の煤(す)してあれど己が妻こそ常(とこ)めづらしき 詠み人知らず(巻11・2651) 難波江の薄闇かけて葦火焚く 難波津のうすずみの空蘆火焚く 難波津の空の薄闇蘆火焚く 難波津の沖つ薄闇蘆火焚く 難波江に夜来の雨や蘆を刈る 難波江…

山萵苣の白露おもみうらぶるる心を深み吾が恋ひ止まず 柿本人麻呂(巻11/2469) 山萵苣の白露を置く柔らかさ 山萵苣の白露を置く重さかな 山萵苣の露置きてより白きかな/+/ 山萵苣の露置きいよよ白きかな 山萵苣の白露宿す重さかな

卯の花の咲き散る岳ゆほととぎす鳴きてさ渡る君は聞きつや 詠み人知らず(巻10/1976) 卯の花の咲き散る岳ゆほととぎす 卯の花の咲き散る岳やとの曇り 卯の花の咲き散る岳よ御田植 卯の花の咲き散る岳や練供養 卯の花の咲き散る岳よ晶子の忌 卯の花の…

激つ瀬の千々に砕けぬ月の淵

かりがねの鳴き継ぐ夜のほどろかな 落ちたぎち流るる水の磐に触り淀める淀に月の影見ゆ 詠み人知らず(巻9/1714 いきおいよく激つて流れて来た水が、一旦巌石に突きあたって、そこに淵をなしている。その淵に月影が映っている。 激津瀬を月明分かつ巌…

夜顔

衣手の夜霧に濡るる逢瀬かな