俳句

明日も生きてゐる感じ 春

2017年3月文學の森 『明日も生きてゐる感じ』は中村國司(1949 - )の第1句集。跋:白岩敏秀。 作者は「白魚火」同人。 春 料峭や寄れば薄荷の匂ふ唇 日野草城調。私は好きだが、好みが分かれそう。 蒼穹を岳をななめに燕来る わたしなら「来ぬ」で切る。描…

夏の月父の鉛筆削りけり 長く鋭く鉛筆削る日永かな

干鰈・忍冬・蕗

筑波嶺の水田曇りや干鰈 干鰈友の句集を開きけり かっこうや友の句集に指栞 忍冬友の句集の届きけり 蕗の雨妻の病に臥せにけり 蕗苦く妻は病に臥せにけり 鋭く遅く鉛筆削る暮春かな 干鰈見知らぬ人と語らひぬ 鋭く鈍く鉛筆光る日永かな 木犀の香る辻まで見送…

宵涼みマニキュア薄く塗りにけり らいてう忌マニキュア重ね塗りにけり

婚礼のたとへば柿の若葉かな

婚礼の高窓と鳩誓子の忌 おもひきや在五中将業平忌 杜若在五中将業平忌

星満つる庖丁の刃や青胡桃 稲光爼に水流れをり 遠雷や午睡の父に妣なくて 墨西哥の叔母より旅信金魚草 墨西哥の叔母の旅信*1や金魚草 西よりの旅信届けり金魚草 金魚草西より旅信届きけり 浦上の鐘ゆるやかに種浸 友悼むやうに夕顔蒔きにけり 夜顔を蒔く友悼…

壊れさうな薄暑光*1とふ柔きもの 初夏の接吻に永遠契りけり 接吻に永遠の契りや夏手套 *1:月明、春の闇、春の月、春光、若葉光、新樹光、晩夏光、短夜

婚の夜や薔薇の花びら湯に浮べ 身動ぎもしえぬ病臥や水中花 病める子*1のせがむ*2リボンや水中花 *1:病む妹の *2:ねだる

春愁や結婚前夜妻と居て

勝ちて坐す力士の額汗ばめり 勝ちて坐す横綱や汗滴らせ 手刀を切る横綱や汗ばみて 横綱の汗滴らす上手投げ 横綱の汗のたばしる上手投げ

綱町三井倶楽部20170502

湖畔*1までなだれて*2しゃがの花明り 忽然と出で*3忽然と消えて蛇 忽ちに出で忽ちに消えて蛇 黒揚羽全き影の間より 葛城の山毛欅の闇より黒揚羽 書き出だす草書の文や藤の雨 美濃和紙の行書の文や藤の雨 藤の雨草書の文を書き初む 勿忘草群れて一花は翳にあ…

旅に立つ夜は遠足の心なり 春愁と旅待つ心地相似たり

玉虫や和解も知恵の一つにて

今週のお題「ゴールデンウィーク2017」 花呉座に親子の将棋指しにけり 藺座蒲団親子の将棋指しにけり 藺座蒲団子の陣に飛車成りにけり 藺座蒲団子の飛車成り返りけり 子のと金忍び寄りけり藺座蒲団 簟親子の将棋指しにけり 白上布雪国に父残しけり

天保の父祖より継ぎて耕せり 天保の父祖より継ぎし畑打てり

円山公園・知恩院・八幡・青蓮院・三年坂・高台寺

天鵞絨の絨毯のごと落椿 敷き満ちて絨毯のごと落椿 傘傾ぐ単衣の妻や二寧坂 駆け出して子ら滝壺に飛び込めり 初蝶や旅信の届く音のして 芽柳や産念坂に灯の入りて 鍵善の暖簾ふくらむ春の宵 円山の花散り初めて御忌の鐘 円山の花散りいそぐ御忌の鐘 円山の花…

仁和寺・法金剛院・妙心寺退蔵院・平安神宮・都をどり

枝垂桜しだるる空の静寂かな 仁和寺や雲居にまがふ夕桜 いづこより花の散るらむ御室道 保津川*1に花流れゆく知恵詣 花馬酔木叡山は雲寄らしめず 花馬酔木筑波嶺は雲寄らしめず 木瓜咲くや坂なだらかに御室道 木瓜咲くや御室の路のなだらかに 山桜谿深ければ…

根無雲馬柵の若駒翳しけり 浮雲の翳す子馬や那須五峰

ラック&ラック

仕立師の巻尺当つる五月かな 採寸の背の*1巻尺よ鳥曇 夏は来ぬ巻尺背に当てられて *1:に

バンバ桜まつり

少年の吹くサックスに落花舞ふ 立ち上がるサックスのソロ兜太の忌 サックスのソロ立ち上がる兜太の忌 サックスのリード含みぬ花吹雪 夕桜楽団リード含みけり立ち上がるアルトの指や花吹雪

龍天に登りて潮深みけり 龍天に登りて潮目濃かりけり 龍天に阿波の潮目の変はりごろ

浜離宮恩賜庭園

花びらの影に散りつぐ桜かな 花びらの影に花びら重なれり 草木瓜や離宮の風の在り処 連翹に陰影といふ重さあり 石楠花に陰影といふ重さあり 白木蓮に陰影といふ重さあり 花冷や溢れむばかり芋焼酎 菜の花や夫婦の一つ傘の下 四阿に腰深く坐す花菜風 春泥の飛…

若草の萌え立つ馬柵やとの曇

銀座松永

理髪師の顔*1剃る音や寒の入*2 *1:頬 *2:冴返る

芳賀町

水論の果伝来の堰壊す 水喧嘩一家にて堰壊しけり 水喧嘩伝来の溝埋めにけり 水論の間取り持つ依頼かな

残菊や駅舎に友を見送りて 空港に交はす別れや花茨 空港に交はす別れや牡丹雪 空港に交はす別れや緑立つ 空港に交はす別れや鳥雲に 空港に手を振りあふや夕鶴忌 空港に交はす別れや荷風の忌 空港に交はす別れやカラジューム 空港に交はす別れや雁渡 空港に交…

煉切を懐紙に享くる弥生かな 練切を享くる懐紙や春隣 練切を享くる懐紙や目借時 春めくや懐紙に包む京あられ

紅葉坂・ラテンダロッサ

妻長き髪にダリアを挿しにけり 花桐や祈り捧ぐる老牧師 青嵐時計の鐘の正午打つ 讃美歌の声響き合ふ立夏かな 羅や階に妻振り返り 白靴の新郎花嫁の下へ 祝福の十字切らるる夏はじめ 結葉や花嫁曲ぐる薬指 新緑や両手重ねて切るケーキ 帆船の港に入る日風車売

快方に向かふ子掴む*1桜餅 病む妹の諸手に掴む桜餅 *1:の手の

雛祭

雪洞に映るや雛の笛太鼓

鶏冠より勝鶏気負ひ立ちにけり 勝鶏の赤き鶏冠の震へけり 勝鶏の鶏冠正しぬ桜島

羽子板や子のスカートの膨める

バレンタインデー

*1 バレンタインデー屋上に空見上げけり 屋上の鉄柵バレンタインの日 *2 校庭の楠バレンタインの日 *3 楠の影伸びバレンタインの日 夕日差す黒板バレンタインの日 *4 *1:バレンタインデー屋上に来ぬ人を待つ *2:星形に焼き上げバレンタインの日 *3:楠の木陰…

平安神宮

神苑を踏みしめしより散る桜 神苑の門くぐるより*1散る桜 *1:なり

綱町三井倶楽部0212

婚の扉の前や白百合胸に挿し 白百合を胸に挿し花婿となる 薔薇胸に挿して花婿と名乗りつ 薔薇胸に挿すや花嫁窓に待つ 薔薇胸に挿し花婿と名乗りけり 婚礼の道来る妻や風五月 戒壇に伸ぶる絨毯新樹光 婚礼の道歩む妻風五月 義父の手が妻の手離す蔦若葉 羅のヴ…

教科書に頬載せ眠る*1春炬燵*2 教科書に髭の落書落第子*3 *4平仮名のわが名指差す入学児 入学の子や幾度も母を見て 幾度も母に振り向く入学児 *1:寝るや *2:目借時 *3:落第す *4:立札

吉宗・眼鏡橋・亀山社中・或る列車・大村・ハウステンボス

寺町や仔猫右手に頬を掻き 猫の子の右肢頬辺*1撫でにけり 一湾の凪や寄居虫壜越ゆる 一湾の凪ぎて寄居虫壜越ゆる*2 薔薇の芽や皺刻まるる*3修道女 花冷*4の櫓上るや茶碗蒸 花冷や碧き蓋置く茶碗蒸 出島より遊女出で来ぬ木の芽雨*5 葬列や片栗の咲き続く坂 忍…

外海

老年はやがて自分がここから立ち去る日が来るが、自分がこうしてうまれたことが、自分を含めてこの地上で生きている全てのものは苦しんだり愛したり結びあったり別れたりして一人一人の人間であったことが、言い様のない懐かしさで感じられる。 遠藤周作 旧…

井戸桶*1に星粒充てり寒の水 井戸底に星敷き詰めて*2寒の水 *1:底 *2:充ちぬ

花園神社・日比谷公園・神楽坂

簪や梅が香に立つ神楽坂 琴の音や梅が香に立つ神楽坂 三味線や梅が香に立つ神楽坂 梅が香や簪揺るる神楽坂

レトロな鍵

錠前に差し込む鍵やリラ月夜

淡雪やすれ違ふ人友に似て

枯蟷螂依頼者自宅売り払ふ 依頼者の家売り出せり一位の実 罪人と言はれ家売る一位の実 罪人と言はれ家売る鰯雲 罪問はれ依頼者自宅売れり冬 立札に売家と書く涅槃西風 立札の売家の文字涅槃西風

嘴に蜜滴らす目白かな 海蒼みけり*1寒椿咲き初めて 目白らの蜜を吸ひたる寒椿あらたまの春来たりけるかも *1:友来るらし

雪焼けし妻の目元や口付けて 雪焼けし妻の目元に口付けぬ 口付や妻の目元の雪焼けて

ジョイス・キャロル・オーツ『ブラックウォーター』

一位占む星うらなひや独立祭 独立祭星占ひに*1一位領む 占ひの一位は獅子座巴里祭 独立祭蟹座の星に子の生れぬ 白浜や金貨のごとき月の海 *1:の

七種

俎の檜香に立つ薺打 皹の指の先なる薺爪 大小の緑吹き寄せ薺粥

出初式

出初式制帽銀の釦あり 制帽の鷹の紋章出初式 鷹の羽の家紋を胸に出初式 鷹の羽の紋章胸に出初かな 鷹の羽の胸の紋章出初式

新春 砺波

立山に東雲兆す初手水 立山や曙光湛ふる*1初手水 門松や今朝の目覚の窓の雪 門開けしより初雀群れ飛びぬ 頂に氷雨降りけり初山河 越中に雪積りゆく初湯かな 順番を待つ初刷の日章旗 数の子や木目細かき椅子に坐し 新妻の寝息しづかに大旦 初旅や肩に荷物を引…