俳句

初刷の日の出に曙光到りけり

初鳩のビルの窓辺に睦みをり 買初の父に贈れる文庫本

霙鍋・冬の月

寒月や寝しづまりたるビルの街 元日の月下やビルの窓緊り 口外の禁止条項霙降る

珈琲の豆粗く挽くどてらかな 珈琲の豆粗く挽く霜夜かな 挽き立ての珈琲の香や冬麗

餅つき

白日に杵振り上ぐる餅屋かな

雑煮

人類に空爆のある雑煮かな 関悦史

晦日蕎麦・すき焼き

子らの寝て年越蕎麦の二人かな 鋤焼や子の皿にまづ取りて遣り

叱る妻水鉄砲に打たれけり

ふぐとずわい蟹とパンダとキリタンポ

大皿に盛る河豚刺しをつまみけり 河豚刺しの厚みを歯もて噛み締めぬ 河豚刺しの厚みを歯もて確かめぬ 河豚刺しの歯にある厚み確かめぬ 河豚刺しの口に拡がる厚さあり 大皿の河豚刺しにある噛みごたへ 能登酒を甲羅に注ぐずわい蟹

みちのくの雪は子の眼に降りて来ぬ

綿虫やわが三十の掌 綿虫や熱を帯びたる掌 綿虫やゆつくり包む掌

一茶忌や遺産分割協議果て 一茶の忌遺産分割協議了ふ

那須烏山

黙契のごとく介護す枇杷の花 黙契のごとき介護や枇杷の花 相談を了へぬ冬田の蓮根掘 筑波嶺や泥濯ぎういる蓮根掘 筑波嶺や泥拭ひういる蓮根掘 筑波山掘り出す蓮根掲げけり 泥の手の額拭へり蓮根掘 蓮根掘泥の手に頬拭ひけり

さきがけの漆紅葉の一葉かな

鮟鱇鍋

漁り火の沖に燃え立つ鮟鱇鍋 沖かけて漁り火燃ゆる鮟鱇鍋

霜枯

霜枯を踏み分けてゆく那須野かな

那須 初雪・風花

初雪の菲々と降りゆく那須野かな 風花や黒猫眠る長屋門

強霜の闇纏ひ聳つ浅間山

強霜の闇纏ひけり極楽寺

寄鍋

寄鍋や祖父の同じ日繰り返す

槍鶏頭白日帯びて枯れにけり 冬靄やポストに封書落つる音

鶴カントリー倶楽部

暁光の雄蘂に宿る寒椿

貸金の督促送る枯柳

ホア・ルー

涼風をとどめブーゲンビリアかな 涼風をとどむるブーゲンビリアかな ・黎明の霊廟に降る瑠璃のこうえ 温もりの背にある牛を冷やすなり ・背の瘤の大き水*1牛冷やしけり 霊廟の手水の杓や一葉落つチェス盤に黒き騎士置く露台かな チェス盤の騎士進めをり夏舘*…

ハロン湾

パイナップル売る手貰ふ手香りけり 桃渡す手も貰ふ*1手も匂ひ立つ 龍天に昇る諸島の雲間かな 龍天に昇る山河の蒼さかな 初漁の水夫跳び乗る暁の舟 ・残照の遠き山火の走りけり 国栖原の*2遠き畔火の走りけり 黄昏の帆影曳きゆくヨットかな 一湾に潮風満つる…

ハノイ旧市街・郊外

磯鴫庵虎御前の雨降りにけり 扉を開くより水鉄砲に打たれけり 怒る妻水鉄砲に打たれけり ペチュニアや路地裏に聴く胡弓の音 頬寄せてパイナップルを喰うべけれ 恋人と頬寄せ夏の蜜柑かな 夜市のもろこしの火に座しにけり宵の市田螺の剥き身並べけり

ハノイ朝

杜影の湖にたゆたふ御講凪 みづうみに杜影のある御講凪 葉柳やみづうみにある夜の蒼さ 対岸を見果てぬ河や宵涼み 釈奠や黒き杜ある水鏡 釈奠や暁の舟置く水鏡 一柱の支ふる社朱ぼん咲く 一柱の支ふる寺や花蜜柑 水芭蕉古城の池に浮かびけり 網篭の鶏のこえ夏…

ホーチミン夜

・夜市の間抜け来る石鹸玉 夜市の呉座に吹きういる石鹸玉 スコールや諸人宿す阿弥陀堂*1 噴水の火息みて王宮現れぬ 噴水の火息めば古城の現れぬ *1:歌劇場

クチ

船頭の笠紐結ぶ田植舟 ゴムの木の皮薄く剥ぐそぞろ寒 ゴムの木の皮薄く剥ぐ緑雨かな ゴムの木に斧振りかむる杣の秋 肌脱の軍手に運ぶ丸太かな ・両耳の*1伏する牛より冷やしけり マンゴーの花ぞ垂れゆくみどりの夜 ▲滴れり地下壕の壁伝ひゆく 地下壕の壁伝ひ…

ホーチミン

▲マンゴーの花の散りゆくプールかな 春の芝校旗の影のはためきぬ ギロチンの刃の鋭角や番紅花 木耳や月の出を待つ旅をはり ・ポインセチア高き星より瞬けり 鉄条網赤く錆び付く仏桑花 鉄条の赤く錆び付く仏桑花 鉄条の網の朱さよ仏桑花 鉄条の網の錆び付く仏…