俳句

秋吉台

丘陵に消えゆく路や青芒 山彦やわれと背並ぶ青芒

瑠璃光寺

草の香のハンカチーフを拾ひけり 河骨や本堂靄の中に立つ 蜘蛛の井の玉走る 山靄を負う三門や蟇 五月雨や鯉が鰭ふる瑠璃光寺 虎が雨茅葺の塔青みけり 堂塔に雨煙りをり蟇 夏霧や堂塔の影浮かび立ち 夏霞堂塔の影淡きなり 夏霞堂塔の影淡かりき 堂塔の影の煙…

さくらんぼ

正拳突鼻より汗の滴れり

二社・かんまんが淵

舞殿の幣打つ赤城颪かな 鳥居楼門(新門)お旅所、拝殿、社殿、奥宮、本殿、幣殿、神籬(ひもろぎ)、神興(しんよ、みこし) 若水や 茅の輪くぐり、夏越の祓 払暁の山霧容るる茅の輪かな かんまんが淵

尚仁沢湧水・蕎麦掻

木流しやことに丸太の浮き沈み 木流しや断崖に傷の如き穴 せせらぎ みくまり 碧潭や丸太を渡る木下闇 河鹿笛かんなび山の 雪解の激つ瀬分かつ巌かな 送り梅雨激つ瀬分かつ巌あり 蛍火や沢風に榧かぐはしき 蛍火や沢風に槇かぐはしき 竜淵に動くものなき夜明…

神楽坂

パティシエの泡立ち上げて巴里祭 パティシエの泡立ち上げて暖かし メレンゲの泡立ち上ぐる巴里祭 メレンゲの泡立ち上ぐる暖かさ

宿す子に胎動のある弥生かな 懐妊や

黒羽

城山の淡き紫陽花月夜かな 山裾の淡き紫陽花月夜かな 紫陽花の色の定まる翁道 刑務所の門へ続けり薔薇の垣 額の花空堀に日の注ぎけり 刑務所の壁聳え立つ梅雨入かな*1 黒羽 *1:額の花

熱帯魚

雷匂ひ来ぬ寂静を先立てて 熱帯魚水は器に逆らはず 浮いて来い水は器に逆らはず

職替へり皹の母何も云はず

子蟷螂

蟷螂の逝きてなほ斧*1かざしをり 鎌かざすまま蟷螂逝きにけり 蟷螂の鎌かざすまま逝きにけり 枯蟷螂鎌かざすまま逝きにけり *1:鎌

夏椿・目高・青蔦・額の花・草城

青蔦や少年の開け放つ窓 青蔦や煉瓦の影の女の背 額の花師にも第一句集あり 青芝や水槽逆しまに洗ひ 水槽の目高に沙羅の花散れり [:

拘置所の眠られぬ夜の長さかな

燕の子

近付きて燕の子らの啼き止めり 子燕の嘴ばかり犇めけり 子燕の嘴幾つ犇めくか

蟻逝きてその巣穴まで運ばるる 蟻逝きて隣のありに曳き擦らる 蟻逝けり隣のありに曳き摺らる 蟻逝くや隣のありに曳き擦らる 蟻逝けり隣のありの曳き初めて 蟻逝くや隣のありが曳き初むる

ごきぶりと叫びし妻や叩く音

立葵妻懐妊の兆しあり 五月富士妻妊娠の兆しあり 白南風や著き妊娠検査薬*1 浅茅生や想ひ忍ばせ丘に立ち 文机に記す旅程や翁の忌 宿す子に胎動のある弥生かな 産科医の妊娠告ぐる桜まじ *1:朝焼

「ちゅうくらい」という生き方 渡邉弘

Amazon CAPTCHA 新論とはおもわないが、一茶のことがわかる良書。 注記ない限り、一茶の句。著者の論。 蟻の道雲の峰よりつづきけん 一茶は30そこそこの聖ねん。才能よりも指導者としての巧み、挙措動作の確かさを求める。つまり、大人の俳諧師を予定し、…

枇杷・麦の秋

空にもぐ枇杷の香りの双手かな もぎ来る枇杷の香りの双手かな 盗み見る父の技あり椎の花 受け継ぎし父の技あり椎の花

初夏の風のオープンテラスかな 更衣自転車に坂下りけり サルビアや自転車に坂かけあがり 梨花月夜病む妻の背を摩りけり 立ち漕ぎてスペイン坂の薄暑かな 立ち漕ぎて道玄坂の新樹かな 立ち漕ぎて道玄坂の夏木立 立漕ぎの道玄坂のシャツ白し 白シャツの少年坂…

芽起しや螺子巻き上ぐる腕時計

吊革に届かざる子や端午の日

野馬追の騎馬嘶かぬ被曝かな 野馬追の騎馬嘶かす疾風あり

明日も生きてゐる感じ 中村國司 冬・新年

ohnehastaberohnerast.hatenablog.com抄録 冬 何もかも十一月の所為にする 花八つ手恋の噂のやつと立つ 神様を見せてもやれず七五三 寄金して洟を手で拭く七五三 田一枚空けて白鳥待ちういたる 角いくつ曲がりても塀花八つ手 ふんだしと杣のいふなる雪時雨 …

明日も生きてゐる感じ 中村國司 秋

ohnehastaberohnerast.hatenablog.com 抄録 竿燈を腰に双手を月に差し 地球より月の寂(しず)かな原爆忌 鉄工の音はたゆまず敗戦忌 騎馬戦の少年吼ゆる天高し 桐一葉訃報といふは一行詩 新米を担げば天下取る心地 蟷螂はひげも機嫌も斜めなり 駐在の縛して…

遠雷や逝きし長子の長所聞き 遠雷や稚く逝きたる子の話 遠雷や幼く逝きし子の話*1 *1:瑪瑙

中村國司 明日も生きてゐる感じ 夏

kanchu-haiku.typepad.jp 夏 早む瀬に五月の光透りけり 馬酔木調。透りけりでよいのか。類想がありそうだが、景が見える。 おほどかに蟻を這はせし子の眠り 優しいまなざし。 筍とよぶぎりぎりの背の丈 「たけ」がわずかにリフレインしているのも技法だろう…

ロマンチック村・クーリルージュ

美味しいバスク料理であった。 揺籃の子の目の都忘れかな 百合甘ければ揺籠に括りけり 揺籃を揺らす指より夕焼かな 夕桜*1揺り籠に妻歌ひをり 夕焼や揺り籠揺らす歌ありて 揺籠をゆるゆる揺らす雪明り 揺り籠を揺らす指あり雪安居 雪蛍揺り籠緩く揺らしけり …

明日も生きてゐる感じ 春

2017年3月文學の森 『明日も生きてゐる感じ』は中村國司(1949 - )の第1句集。跋:白岩敏秀。 作者は「白魚火」同人。 春 料峭や寄れば薄荷の匂ふ唇 日野草城調。私は好きだが、好みが分かれそう。 蒼穹を岳をななめに燕来る わたしなら「来ぬ」で切る。描…

夏の月父の鉛筆削りけり 長く鋭く鉛筆削る日永かな

干鰈・忍冬・蕗

筑波嶺の水田曇りや干鰈 干鰈友の句集を開きけり かっこうや友の句集に指栞 忍冬友の句集の届きけり 蕗の雨妻の病に臥せにけり 蕗苦く妻は病に臥せにけり 鋭く遅く鉛筆削る暮春かな 干鰈見知らぬ人と語らひぬ 鋭く鈍く鉛筆光る日永かな 木犀の香る辻まで見送…

宵涼みマニキュア薄く塗りにけり らいてう忌マニキュア重ね塗りにけり

婚礼のたとへば柿の若葉かな

婚礼の高窓と鳩誓子の忌 おもひきや在五中将業平忌 杜若在五中将業平忌

星満つる庖丁の刃や青胡桃 稲光爼に水流れをり 遠雷や午睡の父に妣なくて 墨西哥の叔母より旅信金魚草 墨西哥の叔母の旅信*1や金魚草 西よりの旅信届けり金魚草 金魚草西より旅信届きけり 浦上の鐘ゆるやかに種浸 友悼むやうに夕顔蒔きにけり 夜顔を蒔く友悼…

壊れさうな薄暑光*1とふ柔きもの 初夏の接吻に永遠契りけり 接吻に永遠の契りや夏手套 *1:月明、春の闇、春の月、春光、若葉光、新樹光、晩夏光、短夜

婚の夜や薔薇の花びら湯に浮べ 身動ぎもしえぬ病臥や水中花 病める子*1のせがむ*2リボンや水中花 *1:病む妹の *2:ねだる

春愁や結婚前夜妻と居て

勝ちて坐す力士の額汗ばめり 勝ちて坐す横綱や汗滴らせ 手刀を切る横綱や汗ばみて 横綱の汗滴らす上手投げ 横綱の汗のたばしる上手投げ

綱町三井倶楽部20170502

湖畔*1までなだれて*2しゃがの花明り 忽然と出で*3忽然と消えて蛇 忽ちに出で忽ちに消えて蛇 黒揚羽全き影の間より 葛城の山毛欅の闇より黒揚羽 書き出だす草書の文や藤の雨 美濃和紙の行書の文や藤の雨 藤の雨草書の文を書き初む 勿忘草群れて一花は翳にあ…

旅に立つ夜は遠足の心なり 春愁と旅待つ心地相似たり

玉虫や和解も知恵の一つにて

今週のお題「ゴールデンウィーク2017」 花呉座に親子の将棋指しにけり 藺座蒲団親子の将棋指しにけり 藺座蒲団子の陣に飛車成りにけり 藺座蒲団子の飛車成り返りけり 子のと金忍び寄りけり藺座蒲団 簟親子の将棋指しにけり 白上布雪国に父残しけり

天保の父祖より継ぎて耕せり 天保の父祖より継ぎし畑打てり

円山公園・知恩院・八幡・青蓮院・三年坂・高台寺

天鵞絨の絨毯のごと落椿 敷き満ちて絨毯のごと落椿 傘傾ぐ単衣の妻や二寧坂 駆け出して子ら滝壺に飛び込めり 初蝶や旅信の届く音のして 芽柳や産念坂に灯の入りて 鍵善の暖簾ふくらむ春の宵 円山の花散り初めて御忌の鐘 円山の花散りいそぐ御忌の鐘 円山の花…

仁和寺・法金剛院・妙心寺退蔵院・平安神宮・都をどり

枝垂桜しだるる空の静寂かな 仁和寺や雲居にまがふ夕桜 いづこより花の散るらむ御室道 保津川*1に花流れゆく知恵詣 花馬酔木叡山は雲寄らしめず 花馬酔木筑波嶺は雲寄らしめず 木瓜咲くや坂なだらかに御室道 木瓜咲くや御室の路のなだらかに 山桜谿深ければ…

根無雲馬柵の若駒翳しけり 浮雲の翳す子馬や那須五峰

ラック&ラック

仕立師の巻尺当つる五月かな 採寸の背の*1巻尺よ鳥曇 夏は来ぬ巻尺背に当てられて *1:に

バンバ桜まつり

少年の吹くサックスに落花舞ふ 立ち上がるサックスのソロ兜太の忌 サックスのソロ立ち上がる兜太の忌 サックスのリード含みぬ花吹雪 夕桜楽団リード含みけり立ち上がるアルトの指や花吹雪