俳句

焼岳の雲やけ残る紫蘭かな

えご散ると夜空は雲を鏤めぬ えご散ると夜空は雲をちりばめぬ

露の大地子の手わが手のなかに小さし 古沢太穂 手の中に吾子の手小さし初幟 手の中に吾子の手小さし夏木立 手の中に吾子の手小さし日向水 手の中に吾子の手小さし遠花火 手の中に吾子の手小さし浮ひて来い 手の中に吾子の手小さし小判草 手の中の吾子の手小…

木をゆさぶる子がゐて夏の家となる 津田清子 一切の無常なるものは影に過ぎない ゲーテ 若竹を揺る子夕影濃くなりぬ 若竹を揺る子に空の青さかな 今年竹空のあをさに揺りにけり 若竹を揺るや青空あをまさる 若竹を揺る子や雲の生れつぎ 雲生れつぐや子の揺る…

カルミア

三橋鷹女 第四句集『歯朶地獄』自序

一句を書くことは 一片の鱗の剥奪である

西行忌

林間に湧水掬ふ西行忌 林泉に喉を鳴らしぬ西行忌 林泉に喉鳴らしをり西行忌 林泉に喉鳴らしけり西行忌

膝の子は風の重さよ半仙戯 ふらここの膝の子風の重さなり

大鰺刺太くゆるけき河口あり 太く蒼く海となりけり夏の川 夏川の蒼さ太さよ海となる 俯きて両眼擦る子合歓咲けり

大平山麓

冬ふかき森ゆく斧を光らせつ 草間時彦 朴咲いて細くはげしき流れあり 同上 肩の上の斧光らせつ夏木立 林間に斧光りたる新樹かな 斧光りつつ新緑の木立ゆく 子の顔に夏木のひかり縞なせり 山梔子の散るや瀬音の迅く深く 谿川の渓に落ち込むえごの花 谿川の水…

飯田蛇笏・飯田龍太

寒の月白炎曳いて山をいづ 飯田蛇笏 漆黒の夜を湧きたちて飛雪舞ふ 飯田蛇笏 月の道子の言葉掌に置くごとし 飯田龍太 龍太忌の薄闇を刷く深空かな 龍太忌の薄闇を刷く深空あり 蛇笏忌の雁残照を曳きにけり

森澄雄

ぬばたまの夜の白桃や澄雄の忌 白桃の夜に香り立つ澄雄の忌 澄雄忌の夜の白桃の香り立つ 澄雄の忌夜の白桃の香り立つ 澄雄忌や夜の白桃の香り立つ 澄雄忌の白桃の闇香り立つ 白桃の香に立つ夜や澄雄の忌 妻に剥く白桃香る澄雄の忌 妻に買ふ白桃香る澄雄の忌 …

きりぎりす祖母の棺を運びけり

胸の上の守り刀や遠蛙 支へ持つ棺や月のおくれ出づ 櫛置きて納棺す月おくれ出づ 月おくれ出づるや棺支へ持つ 煙草置き棺閉めけり遠蛙 煙草置く棺や月のおくれ出づ 七夕竹弦月おくれ出でにけり 七夕竹沖雲おくれ出でにけり 祭笛弓張月のおくれ出づ 祭笛弦月お…

夏布団吾子のからだに吸 ひ付きぬ。 子の胸に吸い込まれゆく夏布団、 焼岳の雲被きたる植田かな、 大の字の吾子に吸い付く夏布団、 焼岳の雲負ふ茅花ながしかな 雲匂ふ木々さやぐ卯の花腐し。

夜顔蒔く

雲匂ふ肌つたふ卯の花腐し 雲匂ふ草さやぐ卯の花腐し

子の口にいちごのひかり運びけり 子の口に運ぶいちごのひかりかな 子の口に落すいちごのひかりかな 水を切る苺ひかりをまとふのみ 苺洗ふや水の面を弾きつつ 水弾く面を洗ふ苺かな

子らの声乗りくる茅花流しかな 根岸善雄 牧牛の声に草笛もて答ふ 坂本怜子

種浸し

桐咲いて雲はひかりの中に入る 飯田龍太 合歓の花沖には紺の潮流る 沢木欣一 子の開く口に桑の実落としけり 桑の実の紅しずかなる高嶺かな 飯田龍太 ほてい草月の面を流れ過ぐ 福田田手汀 曇る日は曇る隈もつダリヤかな 林原禾井戸 芍薬の逢瀬のごとき夜があ…

蒼穹のあを窮まれば草矢打つ さくらんぼ子に食べさせて母若し 星野立子 妻の手のバナナこそ口大きけれ 子の開く口に木苺落としけり 道化師の化粧を落とす若葉寒

葉桜や葬列つづく散居村。

遠つ嶺の光を返す雪解川 道化師の化粧を落とす若葉冷 立山の影に膝折る田植かな 子の父に手渡す早苗ひかりをり 子の父に手渡す苗のひかりかな 子の父に渡す早苗のひかりかな

一薙ぎに子の払ひたる小判草 田植機に手渡す苗のひかりをり。 親が子に手渡す苗のひかりかな。 喪の家を照らす苗代月夜かな 喪の家に灯ともしぬ苗代月夜 葱畑の青立山につづきけり 天地をつなぐ葭火の煙立つ 天地を充たす葭火の煙立つ 紫英花田や子の傅きて…

喪に服す

喪の家に代田の落暉つづきけり! 喪の家に代田のひかり届きけり

藤棚

緑蔭に影残しけり祖母を焼くあつきあつき骨壺懐く藤の昼。 白骨の千々に砕けぬ藤の雨 骨壺にほのかな温み 藤 の雨 骨壺を抱くぬくもり藤の雨。 藤の昼骨壺懐く余熱あり 時鳥骨壺懐く余熱あり ほととぎす骨壺懐く余熱あり 慈悲心鳥骨壺懐く余熱あり 白藤の垂…

砺波

遠雷の山裾出づる葬りかな 遠雷の山裾出でぬ葬りかな。 苗代や葬りの列の散居村。苗代や葬列ながき散居村 瓜の花骨壺懐く余熱あり

桐生・サイダー型栓抜き

烏賊釣火闇新しくなりにけり

日のいまだ高き菖蒲湯沸きにけり 山崎ひさを ソーダ水つつく彼の名出るたびに 黛まどか 山雲のうつろひ遅し樫の花 山雲のうつろひ遅し萩若葉 鼻に水滴る牛を冷しけり 眠たさにうなじおとなし天瓜粉 水原秋櫻子 尻尾振りながら水牛冷さるる ホースより牛の額…

佐保姫の息吹に開く塩むすび

子の包む手より飛び出すてんと虫 梅雨晴の月高くなり浴(ゆあ)みしぬ 石橋秀野 夕焼くる子らにやさしきことを言ふ 三谷昭 子を呼びに来し子の声も油照り 飯田龍太 樹の上に子がゐて地上大旱 能村登四郞 片蔭へ子を入れ若き母が入る 川崎展宏 雪解富士夜も影…