俳句

大貫たかし

嶺越ゆる雲影淡し濃りんどう*1 *1:少し濃いと薄いの狙いが透けすぎているか

砺波

手庇に仰ぐ立山早稲咲けり うたかたの水音明るし源五郎 稲穂より覗く帽子や稲を刈る 稲を刈る帽子小さし散居村 黒揚羽己の影を曳きにけり 空蝉や散居の村の夕篝 盆東風や散居の村の夕篝 白鷺は影なき鳥となりにけり 黄雀や翠や稲田畳なはる 空蝉や家散る村の…

秋高し詩集をひらく旅はじめ 新涼や足裏に土を捉へ立ち 新涼や吾子の足裏の地を掴み

風いれて風のかたちや白芙蓉 風いれて風のかたちや黄蜀葵

新涼や背筋正して座禅組む 座禅組む背筋伸ばしぬ涼新た

稲妻

伊耶那美の妻の横顔稲つるび 伊耶那美の顔持つ妻や稲光 妻の顔伊耶那美めくや稲光 稲妻や伊耶那美めける妻の顔 伊耶那美の顔の妻あり稲光 稲光伊耶那美の顔妻にあり 伊耶那美の振り向く顔や稲光 稲妻の部屋の陰影とどめおく 稲妻のコップの影を置き去りに 部…

夕顔の実

ご存じのように、これを剥いてかんぴょうを作ります。 干瓢を干すや野州は風の国

芙蓉

花芙蓉ふたつ寄り添ひ流れくる 花芙蓉ふたつ寄り添ふ流れかな天に向かふ白き芙蓉となりにけり白芙蓉天のひかりを賜れる 白芙蓉天よりひかり賜れり 白芙蓉天よりひかり賜れる 白芙蓉まぶしきひかり享けにけり 白芙蓉虚空のひかり享けにけり 白芙蓉虚空の底に…

立ち上がる子の素足より草萌ゆる 立ち上がる子の素足より草萌えぬ 若草や素足の吾子の立ち上がり 若草や素足の吾子の立ち上がる 立ち上がる吾子の素足よ草萌ゆる

命名

命名の青墨にじむ春来る 命名の青墨にじむ春兆す 命名の青墨にじむ春は来ぬ 命名の青墨にじむ春立ちぬ

養老軒 葛切

早池峰は雲噴き上げぬ朴散華

夕凍みの真手に包める哺乳瓶 夕凍みの真手に包みぬ哺乳瓶 青蔦や逆しまに干す涎掛

吾子の飲む白湯の涼しき銀の匙 吾子の飲む白湯や涼しき銀の匙

心太滴る箸の高さかな 月明の坂や己の影を曳く己が影曳きて弓張月の坂 己が影曳きてのぼるや月の坂

腹の上に吾子をまろばす籠枕 腹の上を子の攀じりをり籠枕 腹の上に吾子のまろびぬ籠枕 腹の上に吾子まろばしぬ籠枕

芥川龍之介忌

鼻筋の低き子龍之介忌かな 子の顔の鼻まず拭ふ我鬼忌かな 沐浴の鼻より洗ふ我鬼忌かな

持ち寄れる料理重なる暑気払ひ

背負ひ子の力抜けゆく祭あと 背負ふ子の抜けゆく力祭果つ

母衣蚊帳を洩るる灯影や子の熟睡(うまひ) 母衣蚊帳を洩るる灯影や晶子の忌 母衣蚊帳を洩るる灯影や揺らし入る 母衣蚊帳を洩るる灯影や草田男忌

ほうたるの相触るることなかりけり 相触るることなく桜散りにけり 相触れず名残の桜散りにけり

揺り籠の影揺るるのみ余花曇 揺り籠の影揺るるのみ 夕端居 揺り籠の影揺るるのみ夕立あと

千手和子を悼む

櫛一枚青葉の旅の形見とす *1遠山に雲湧きつげり初幟 千人に千の家待つ夕ざくら 林檎煮て玻璃戸曇らす春の雪 光なき月野に上げて西行忌 花冷や常着繕ふ膝の上 眠るまで落葉焚きし香身にまとふ 校倉の影伸びて来ぬ雪蛍 雲ひとつ乗せて二日の富士霞む 動くもの…

氷水 cafe mario

萱草

萱草や鳶の高舞ふ牧の朝

男体山の影引き連れて夜半の雷

刑事最高裁棄却決定

梅雨寒や懲役二年六ヶ月 判決に棄却の文字や男梅雨 判決に棄却の文字よ朮の闇 判決に棄却の文字よ旱星

女には女の苦楽藍浴衣 傘をさす浴衣の後ろ姿かな

汗滲む吾子の額を拭ひけり

瑠璃蜥蜴

蒼穹の底ひに逸る瑠璃蜥蜴 蒼穹の底ひを馳する瑠璃蜥蜴 蒼穹に雲湧き継げり瑠璃蜥蜴 蒼穹のひかり聚むる瑠璃蜥蜴 蒼穹の欠片なりけり瑠璃蜥蜴

推敲

白蓮の吹き降りの夜を開きけり 源氏蛍平家蛍と生まれけり*1 紫陽花や水音明るき渡月橋 梧桐や子らのささめく秘密基地 *1:源氏蛍は6月末、平家蛍は7月末