俳句

捻花

捩花の影のねぢれてういたりをり捩花のねぢれる影となりにけり 捩花のねぢれる影のありにけり 株主の動議のこゑや 株主の動議の挙手や株主の怒号飛び交ふ

覗き込む顏にぶつかる雪つぶて

水鉄砲扉を開くより打たれけり 覗き込む貌にかち合う雪つぶて 覗き込む貌に潰れぬ雪つぶて

メロン

早池峰は雲噴き上げぬ風露草 チェス盤の女王退く晩夏かな チェス盤の女王退く晩夏光 チェス盤に女王踊りぬ鷗外忌 踊り子の浅き眠りや鷗外忌 チェス盤に進む女王や鷗外忌 チェス盤に踊る女王や鷗外忌 チェス盤に女王舞ひをり鷗外忌 鷗外忌チェス盤に舞ふ女王…

罌粟坊主 

越南推敲両耳を立つる馬より冷しけり 夜振の火かぐろき山河照らしけり 夕鐘の牡丹の坂にとよみけり 生れし鹿すぐ立ち上がる夜明かな 楉より白樺の風薫りけり チェス盤の黒き騎士聖金曜日

首夏の子のほつぺた転げ落ちさうな 昼寝子のほつぺた転げ落つるやも 昼寝子のほつぺた転げ落つるらむ 昼寝子のほつぺた転げ落ちむかな 昼寝子の頬の落つるがごとくなり 昼寝子の両頬落ちむばかりなり 昼寝子の頬の円みの拡ごりぬ

梅酒

花呉座の吾子は尻より寝返りぬ 花呉座の吾子や尻より寝返りて 花呉座や尻より吾子の寝返りて 法に仕へ言葉に仕へ古扇

鎌倉・紫陽花

鶏鳴にあはうみ凪ぎつ朴の花 鶏鳴にあはうみ凪ぎつ花楝 鶏鳴にあはうみ凪ぎつえごの花 鶏鳴にあはうみ凪ぎつ黐の花

木下闇靴にてふてふ結び上ぐ 緑蔭や靴にてふてふ結び上げ 緑蔭やてふてふ結び上ぐる靴 結葉や紺の蝶結ひ上ぐる靴 緑蔭や靴にてふてふ結上ぐる 葉桜や朱の蝶結ぶ子供靴 葉桜や紺の蝶結ひ上ぐる靴 緑蔭や胡蝶を靴に結上げて 緑蔭や靴に胡蝶を結上ぐる 緑蔭や靴…

蚊遣火や乳ふふむまま吾子寝入り 蚊遣火や乳ふふみつつ寝入る吾子蚊遣火や乳ふふむまま寝入る吾子

乳ふふむまま寝入る子や罌粟坊主 乳ふふむまま寝入る子や梅雨晴間 乳ふふむまま寝入る子や蚊遣香 握り込む団栗そつと吾に呉れよ 睡る子の手より転がる櫟の実 睡る子の手より転がる小楢の実 睡る子の手より団栗まろび出づ

鶏鳴にあはうみ暁けぬ山法師 鶏鳴にあはうみ暁けつ橡の花 鶏鳴に湖炎え立ちぬ橡の花 鶏鳴にあはうみ凪ぎつ橡の花 鶏鳴に凪ぐあはうみや橡の花

アカシアの散り敷く窓となりにけり アカシアの散り敷く出窓ありにけり

えごの咲く故国に弁護士を継げり 弁護士を継ぎけりえごの散り敷きて 青柿や弁護士を継ぐわが而立 薔薇剪るや父の六法全書継ぎ 青梅や父の六法全書継ぎ 青胡桃父の六法全書継ぐ 青鬼灯父の六法全書継ぐ 青山椒父の六法全書継ぐ 万巻の法律書継ぐわが而立 父触…

大島紬・赤啄木鳥

赤啄木鳥のこゑに山靄霽れにけり 赤啄木鳥のこゑにみづうみ暁けにけり 赤啄木鳥のこゑに山影濃くなりぬ 赤啄木鳥のこゑ降りしきる湖暁けぬ 赤啄木鳥のこゑ降る湖の暁けにけり 赤啄木鳥のこゑ暁闇の湖に降る

なめくぢり双眸揃へ歩み出す

なめくぢの左右に振れる首ありき 蛞蝓に左右睨める目玉あり なめくぢり両目揃へて動き出す 双眸を揃へ蛞蝓動き出す なめくぢり双眸揃へ動き出す

飯田龍太がこんなことを書いていました…。 「作品の推敲とは、事実を追い求めることではなく、事実を選択して作品の真実に近づくことです」と。 なめくぢの左右に振れる首のあり なめくぢの首のあたりを左右に振る なめくぢの左右に振れる首ありぬ みみず伸…

斑猫や尋問の技引き継ぎて 魁の六法全書曝しけり 手始めに六法全書曝しけり 万巻や六法全書より曝し 万巻の中魁の書を曝す

瞑れば楠の葉擦れや長崎忌

郭公の声に山影濃くなりぬ

僧坊に続く抜け道梅雨寒し

イグレック 平安神宮 藤森神社 東本願寺

なめくぢの前後左右に振れる首

大覚寺・清凉寺

ーしてー花(を)了りけり 滝の音は絶えて久しくなりぬれどなこそ流れてなほ聞こえけれ しもつけ

法輪寺・アラビカ・天龍寺宝厳院・嵯峨野湯

干瓢干す故山に弁護士を継げり 南天

梅宮神社・落柿舎

柿に雲流れ去来の忌なりけり 柿に雲移る去来の忌なりけり 凡そ天下に去来ほどの小さき墓に詣でけり 高浜虚子 吹き降りの夜は蓮の葉のひろごりぬ 吹き降りの夜を蓮の葉のひろごりぬ 雨意込めて夜は蓮の葉の広ごりぬ 仏法僧神奈備の杜統ぶるなり 青梅に昨夜の…

仏法僧

仏法僧幼し御所のしんのやみ 仏法僧鳴き継ぐ方の夜の明けぬ 仏法僧鳴き継げば夜の明けにけり 洋館の塀に散り敷く百日紅 御所の夜の雨に散り敷く百日紅

胎動の耳に伝はる寝待月

落葉松の径ゆく山の日なりけり 月のいろ宿す金魚を掬ひけり 大楠の天衝く山の日なりけり 春月の色の移らふ哺乳瓶

お食い初め

揺籠の風の軽さの夏蒲団 揺籠に風の夏掛拡げ置く 揺籠の風容れて置く夏蒲団 揺籠や風容れて置く夏蒲団 揺籠のそよ風孕む夏蒲団 春暁の水底にある哺乳瓶 揺籠のそよ風容るる夏蒲団 揺籠に平らかに置く夏蒲団 揺籠の風に膨らむ夏蒲団