俳句

鳥居より夜の汐にほふ卯月かな 月を獲て夜の汐にほふ藍の花 月を獲て夜の汐にほふ鉦叩 月を獲て夜の汐にほふ大鳥居

流灯

水影に手を離したる流灯会 流灯の背を押すごとく手を伸ばす 流灯の手を離すとき背を押しぬ 水に置く流灯の背を押しにけり 水影の流灯の背を押しにけり 水に置く流灯の手を離れざる

焼鳥の串焦がしたる震災忌,

蜩・桜紅葉

雷鳥や雲踏むごとき尾根の上 雷鳥や雲踏むごとき尾根の径

かぶと虫

峰雲の真中へ吾子走りゆく

風上に川音高し花山葵 風上に川音高し合歓の花 風上の川音高し花山葵 風上に川音高し藤袴 風上に川音高し葛の花 風上に川音高し貴船菊 風上に川音高し実葛 風上に川音高し藍の花 風上に川音高し衣被

麦秋の子や日輪に浮き沈み 麦秋や日に浮き沈む子の帽子 麦秋や吾子の帽子の浮き沈む 浮き沈む吾子の帽子や麦の秋 向日葵や見え隠れして子の帽子

みづうみの水面呑み込む春の雪 身籠れる妻容れ安良居の傘は 貝殻に海の匂ひや蜃気楼 花合歓の空の重さとなりにけり 花合歓や乾くがごとき空のあを 潮風にふくらむシャツや氷水 潮風にふくらむシャツや簟 潮風にふくらむシャツや心太 牧牛の影動かざる大暑か…

川底に魚影さゆらぐ十三夜 川底に魚影沈みぬ十三夜 川底に魚影鎮もる十三夜 オルガンの上の雲影夏休み オルガンを雲流れゆく夏休み オルガンに雲流れゆく夏休み オルガンの上を雲行く夏休

中空に富士の雪あり袋掛 中空に雪残す富士袋掛け 中空に富士雪残す袋掛 邯鄲のこゑ身ほとりの影濃かり 鈴虫や夜風立つたび鳴き競ふ つづれさせ夜風立つたび鳴き競ふ 太陽に浮き沈みつつ蓮根掘 一歩づつ浮き沈みたり蓮根掘 一歩づつ浮き沈みつつ蓮根掘 湖風に…

夜明より山並聳ゆ軒氷柱 山並の黎明に聳つ軒氷柱 夜の明くるほど雪解富士聳え立つ 雪解富士夜の明くるより聳え立つ

子の息に湯気高く立つ七日粥 立ち上る湯気の馨し七日粥 刈伏の麦の香高き登四郎忌 池塘より三日月揚ぐる啄木鳥こだま 池塘より弦月揚ぐる啄木鳥こだま 池塘より揚がる夕月啄木鳥こだま 奥山に夕月揚げぬ啄木鳥谺

夕靄の触れゆく烏瓜の花 夕風の擦れゆく日光黄菅かな 夕靄の触れゆく白根葵かな 花山葵風上に雨到りけり 風上に雨の音する花山葵 風上に雨の音する合歓の花 朴の花源流に雨到りけり 月見草源流に雨到りけり 花楝源流に雨到りけり 合歓の花源流に雨到りけり …

弓始神杉に日の濡れにけり 神杉に日輪懸る弓始 ふるさとの真中に聳ゆ雲の峰 みちのくの真中に聳ゆ雲の峰 走る子の真中に聳ゆ雲の峰 走る子の真ん中に聳つ雲の峰 峰雲の真中へ吾子の走りゆく 走る子の正面に聳つ雲の峰 走る子のいつも正面雲の峰 走る子に正面…

上潮の響きふくらむ洗膾かな 上潮の響きふくらむ心太 上潮の響きふくらむ新茶かな 上潮の響きふくらむ先帝祭 上潮の響きふくらむ巴里祭 上潮の響きふくらむ露台かな 上潮の響きふくらむ白子干 上潮の響きふくらむ目刺かな 上潮の響きふくらむ蒸鰈 早乙女のし…

新涼の裁ち切る布の白さかな 新涼の鋏すべらす布白し 新涼の鋏すべらす白布かな 新涼の白布に鋏すべらしむ 夏空に産着干したり遠白帆 親指を握る産着や天瓜粉 親指を握り込む子や天瓜粉 峰雲に似合ふスーツを仕立てけり 峰雲に似合ふワイシャツ仕立てけり 峰…

竹馬のときをり見せに来りけり 宿題を拡げて眠る春炬燵

愛鳥日林中光降るごとし 子の影の畦を伸びゆく帰省かな 入園やわが影を子の離れざる 春風邪の子やわが影を離れざる 着膨れて熱の子を抱きかかへけり 大楠の下薫風の湧き出づる 焼藷を割るや大きな方を子へ 風船にそつと脚出す子犬かな

啓蟄や影生む土を鋤き返し 鋤き返す土に影あり斑雪山 足裏の土のほてりよ麦を踏む 足裏の土のほてりよ青き踏む 遠足の足庶に草の火照りあり

挽歌

悼みては曇天に散る桐の花 悼みては曇天に散る沙羅の花 悼むとき曇天に散る沙羅の花 悼みけり曇天に散る沙羅の花 曇天に沙羅の散り敷く楸邨忌 茅舎忌や曇天に散る沙羅の花

色鳥や空漉きあげてプラタナス 赤松のあか染め残す夕立あと

春ショール窓開けるたびはためかす 乗船を待つ春ショールはためかせ 乗船を待つ春ショールはばたかせ 降船を待つ春ショールはためかせ 駅停まるたび春ショール羽摶ちけり

滴りの次の滴り誘ひけり 風の風いざなふ飛騨の青嵐 滴りの次の滴り誘ひ落つ 滴りの滴り誘ひ継ぎにけり 滴りのあとや滴り誘ひ落つ 滴りのあと滴りを誘ひつぐ 滴りの滴りを呼び落ちにけり 凍滝や水呼ぶ水の音幽か 凍滝や遠き水待つ水の音 凍滝や遠き水呼ぶ水の…

水論の双方よりの話聞く 水論の一方を引き離しけり 水喧嘩仲裁案を破らるる

土用東風ポプラのみどり噴き上がる 土用東風ポプラのみどり噴くごとし あいの風ポプラのみどり噴き上がる 虹二重ポプラのみどり噴き上がる 雲雀東風ポプラのみどり噴き上がる 朝東風やポプラのみどり噴き上がる

林間学校頭の上に星ひしめける 頭の上に星のひしめくキャンプの夜 頭の上の星の近づくキャンプの夜 頭の上に星の近づくキャンプの夜

肩に載る吾子や新樹の中を過ぐ 肩載する子に眼をふさがれて五月 肩載する子の目隠しや五月晴 肩載する子の目隠しや青嵐 肩載する子の目隠しや若楓 肩載する子の目隠しや樟若葉 肩載する子の目隠しや夏の蝶 肩載する子の目隠しや蠅叩 肩に乗る子の目隠しや青嵐…

すれちがふ髪の香りやクリスマス 石鹸の香とすれちがふ十二月 石鹸の香とすれちがふクリスマス

鉄幹に沁むる夜雨や義士祭 鉄幹に沁むる夜雨やお水取 鉄幹に沁むる夜雨や涅槃変 鉄幹に沁むる夜雨や聖霊会 赤松の色浮かび来る夕立あと 赤松のあか残りたる夕立あと 正月の凧海原の日を聚む