人文科学

『武士道』 新渡戸稲造

平静は、勇気の静止的なあり様である。勇敢な心が精神に定着すると、平静ー心の落ち着きとなつてあらわれる。 本当に勇敢な人は、常に平静である。私たちはこれを「余裕」と呼ぶ

和紙の美 柳宗悦

想へば単純な材料に過ぎない。それなのに眺めてゐて惹きつけられる。手漉きの和紙はいつだとて魅力に満ちる。私はそれを見つめ、それに手を触れ、言ひ難い満足を覚える。美しければ美しいほど、かりそめには使ひ難い。余ほどの名筆ででもなくば、紙を穢すこ…

『花伝』第七 別紙口伝 世阿弥

めづらしきといへばとて、世になき風体をし出だすにてはあるべからず。

岡倉天心『茶の本』

何ものかを表さずに置くところに、見る者はその考えを完成する機会を与えられる。かようにして大傑作は人の心を強く惹き付けてついには人が実際にその作品の一部分となるように思われる。 *1 *1:俳句が十七字で人の心を打ちうるのはこうした理由によると考え…

『風姿花伝』 第二 物学(ものまね)条々 世阿弥

序 物まねの品々、筆に尽くしがたし。さりながら、この道の肝要なれば、その品々を、いかにもいかにもたしなむべし。およそ、何事をも残さず、よく似せんが本意なり。しかれども、また事によりて、濃き薄きを知るべし。 ・・・ 花鳥風月の事わざ、いかにもい…

世阿弥『風姿花伝』序

古きを学び、新しきを賞する中にも、まつたく風流をよこしまにすることなかれ。ただ言葉卑しからずして、姿幽玄ならんを、うけたる達人とは申すべきをや。

シャルル・ボードレール

詩の原理とは 厳密にそして簡潔に言えば ある高度な「美」への人類の憧れであり この原理が明らかにされるのは 魂の感激 興奮においてなのだが 感激と言っても 心の酔いである情熱や 理性の餌である真実などから 完全に独立したものなのである。「エドガー・…

川本皓嗣『日本詩歌の伝統』

詩的文体の基本的文体は、誇張と矛盾である。

月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也 『奥の細道』冒頭

旅の本質は変化そのものにある。 *1 舟の上に生涯をうかべ、馬の口をとらえて老をむかふる物は、日々旅にして、旅を栖とす 一所不住の境界それ自体が、比喩的に不動の「栖」となる。鮮やかな逆説。 世界の実相そのものが旅、つまり変化なのだ。 *1:この人生…

川本皓嗣 『俳諧の詩学』

「うつり・ひびき・にほひ・位」そして「走り」などは、余情の共通性を求めるものである。

『俳諧の詩学』川本皓嗣

「軽み」とは、かすかに「本意」を匂わせながら、その重苦しい規範性と観念性を脱することではないか

川本皓嗣『俳諧の詩学』

すべて文学作品には、いろんな解釈がありうるだろう。そこが文学の値打ちだよ。

断定とは感動の重さである(山本健吉)*1。 *1:感動から物へ、物から核心へである.

現実は断片で在り、作品は完結した世界である。*1 *1:どのようにキャンバスに切り取るかが大事である

「俳句は切字ということーむしろ『切』の問題を」(「国文学」1976年2月号)

古典主義とは本来精神の継承を意図するもので、形式の踏襲に執するものではない。(西垣脩)*1 *1:古典が好きだが、よくよく気をつけなければなるまい

『葛の松原』支考 名句のできるとき

芭蕉庵の翁、一日たふえん*1としてうれふ。曰く「風雅の世に行われたる、たとへば片雲の風に臨めるがごとし。一回(ひとたび)は走狗(((黒い犬))となり、一回は白衣となつて、共にとどまる処をしらず。かならず中間の一理あるべし。」とて、春を武江*2の北に…

賀茂真淵 万葉考

古の歌は言には風流なるもの多かれど、心はたた打見打思ふがままにこそ詠めれ

北原白秋 桐の花・聴けよ妻ふるもののあり 

短歌は一箇の小さい緑の古宝玉である、古い悲哀時代のセンチメントの精エツキスである。古いけれども棄てがたい、その完成した美くしい形は東洋人の二千年来の悲哀のさまざまな追憶おもひでに依てたとへがたない悲しい光沢をつけられてゐる。その面には玉虫…

ホッファー

他者への没頭は、それが支援であれ、妨害であれ、愛情であれ、憎悪であれ、つまるところ自分から逃げる手段である

三橋鷹女 第四句集『歯朶地獄』自序

一句を書くことは 一片の鱗の剥奪である

ニーチェ 善悪の彼岸

人間は未確定の動物である。人間が猿から由来したというには、猿はあまりにも善良である。解 悩み苦しむことは人間の特権であるということ。人格を自覚すること。

キルケゴール

不安は自由の目眩だ。 私は自由だ。何をしてもいいということは、あまりにどこへでも行けて不安という目眩を起こすのだ。読書や映画に縛られる時間は自由はないが不安もない。それは単純に楽しい時間だ。そしていにしへの人たちと心を通わすなど、こよなうな…

ソクラテス

アレテーとは? 物の特質である。 人間は? 人間の特質は?という問いかけ。 徳である。 徳についての研究、人間の善について考えることをソクラテスはフィロソフィアと呼んだ。 フィロは愛、ソフィアは知る、つまり、知を愛するという意味。 我々はこの人間…

吉野詣記 三条西公条

昨日も山中野火ところどころ見えし。今日はまた大きなる木焼けて、折りかへりたる中より炎あがれり。右は山、左は深き谷。足もとにも火燃えける木の下を通れる。

そして詩が本質する精神は、この感情の意味によって訴えられたる、現在(ザイン)しないものへの憧憬である。 引用元は、萩原朔太郎『詩の原理』。青空文庫にもあります。 短歌が人を感動させるために必要な要素のうちで、大きなものが二つあると思う。それ…

穂村弘『短歌といふ爆弾』

あれはまちがいだった。あれはまちがいだった。世界を変えるための呪文を本屋で探そうとしたのはまちがいだった。どこかの誰かが作った呪文をもとめたのは間違いだった。僕は僕だけの、自分専用の呪文を作らなくては駄目だ。

ともしびに踊る影あり草城忌 山の向うは雪が降りゐて干鰈 長谷川かな女 *1 *1:永井荷風

正岡子規 松羅玉液

おもしろきものは相対なり煩悩なり、つまらぬものは絶対なり悟りなり。

ヴィトゲンシュタイン

1 世界は起こっていることの総体である。 2 起こっていること、すなわち事実とは、事態(事柄)が成立するということである。 3 事実の論理的像が思考である。 4 思考とは意味を持つ命題である。 5 命題は要素命題の真理関数である。 6 真理関数の一般…

面白い漫画を薦めよう

少女漫画出身の作家が青年誌で描いてると結構面白い作品が多いのではないかと思う。例えば、 『3月のライオン』 (ヤングアニマル) の羽海野チカさん。『ダンスダンスダンスール』 (スピリッツ) のジョージ朝倉さん*1。『きのう何食べた?』(モーニング…