噴煙の月に棚引く一茶の忌

蕗の葉を露流れ来て露毀つ 梢より灯る夜霧の街の角 梢より灯りゆく街霧降れり 梢より灯りし街の夜霧かな 月影の一筋に滝のぼりけり 凍滝に月一筋になりにけり 月影の凍滝に一縷なり 名月や絹糸のごと滝一縷 十三夜滝絹糸を織るごとし 後の月滝絹糸を織るごと…

錦木のくれなひ容るる没日かな 錦木のくれなひ奪ふ没日かな 錦木の紅つのる没日かな 鶺鴒の羽音に散れりプラタナス みづうみに宵の雨あり松手入 みづうみに宵の雨あり後の雛 みづうみに宵の雨あり初紅葉 みづうみに宵の雨あり新松子 駒鳥の高音伸びたり山毛…

朝顔

海鳥のこゑ呼び交す野分あと 海鳥の呼び交すなり野分あと 呼び交す海鳥のこゑ野分あと 呼び交す海鳥のこゑ秋夕焼 青北風にやすらふ瀬戸の白帆かな 青北風にシャツ干す両手拡げたり 帰燕より碧落近し山毛欅峠 帰燕より天上近し山毛欅峠 帰燕より青天近し山毛…

綿菓子に膨らむ頬や秋祭 綿菓子に膨らむ頬や盆の月 夕立のあと暮れ残る杉並木

湿原の涯の東雲葛咲けり 湿原の涯の曙光や草紅葉 背負籠に秋の七草挿されけり 揺籠に秋の七草挿されけり 揺り籠に秋の七草結はへけり 揺籠に秋の七草結はふなり 水遣りや葉の撓ひ立つ鳳仙花 朝顔の葉の撓ひ立つ水を遣る 竹籠に秋の七草挿されけり 腰籠に秋の…

菊月の日をとどめ置く岳樺 菊月の日をとどめ置く玻璃戸かな 松籟や水音涼しき須磨明石 銀杏散る音か水音幽かなり 水やりのあと匂ひ立つ菊のいろ 水やりに香の立ち上がる紫苑かな 水遣りに葉の立ち上がる鳳仙花 水遣りに香の立ち上がる貴船菊 朝顔や水遣りに…

雨音の雪積む音となりにけり 逆上りの蹴上ぐる釣瓶落しかな 逆上りする子に釣瓶落しかな

温め酒再考

温め酒早稲の香りの服脱ぎつ 脱ぐ服の袖に早稲の香温め酒 杯掲ぐ手より手より早稲の香温め酒 刈り了へし早稲の香残る温め酒 刈り了へし早稲の香淡し温め酒 刈りて来し早稲の香淡し温め酒

風に触れ唇乾く厄日かな

抽斗に影の拡がる月明り 文机に影を拡げる月明り 手枕に影の拡がる寝待月 倒木に影の拡がる月明り 倒木に闇の拡がる鹿火屋守 倒木に闇の拡がる威銃

降る雪や肌を寄せ合ふ子守唄 妻と子の肌寄せ眠る雪嶺星 桔梗や波重ねおく空のいろ 桔梗や波畳なはる空のいろ 桔梗や空重ねおく波のいろ 桔梗や空と重なる波のいろ 虫売の宵の白さを売りにけり 虫売の宵の山影借りにけり 草市に宵の山影売られけり 草市に宵の…

滝音の葉騒に消ゆるごとくなり 葉騒立つときは滝音なくなるよ 葉騒より滝音消ゆるごとくなり 滝音の葉騒立つより火息みにけり

一掬の水に星あり流燈会 クレヨンの青空春を待ちにけり 画用紙に描く青空春を待つ

重陽(高きに登る)

龍城公園胸濡らし秋の七草分けゆかむ 胸濡らし秋の七草分けゆくよ

秋の七草

胸濡らし秋の七草分け進む 胸濡らし秋の七草分けゆけり 胸濡らし秋の七草分けゆくや 胸濡らし秋の七草分けゆくも 胸濡らし秋の七草摘みにけり

トロッコ問題

東京荒川の氾濫を回避するために渡良瀬川付近で氾濫を起こさせたとされている。

温め酒

温め酒稲の香りの夫帰る 温め酒稲の香りの服脱ぎつ 温め酒稲の香うつる服脱ぎぬ 温め酒袂に稲の香りあり 温め酒袖より稲の香り立つ 袂より稲の香淡し温め酒 温め酒袂より稲香りけり 温め酒袖より稲の香りけり 袖口に早稲の香淡し温め酒 指先に早稲の香甘し温…

白雪の峰の木高し鶴の声 横雲の峰の木高し雁の声 横雲の峰の木高し鹿の声 雲宿る峰の木高し鹿の声 雲宿る木高き峰や雁の声 風誘ふ峡のかなかなしぐれかな 風そよぐ峡のかなかなしぐれかな 神籬の杉より暮るる落し水 神籬の杉暮れ残る落し水 串の端の焦げたる…

神籬の杉暮れ残る秋蛍

金槐和歌集  源実朝

葛城や高間の山の時鳥雲居のよそに鳴きわたるなり 126 あしびきの山時鳥深山出でて夜ぶかき月の影に鳴くなり 127 夏はただ今宵ばかりと思ひ寝の夢路にすずし秋の初風 154 山高み明けはなれゆく横雲のたえまに見ゆる峰の白雪

「自分の感受性ぐらい」茨木のり子

ぱさぱさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな みずから水やりを怠っておいて 気難しくなってきたのを 友人のせいにはするな しなやかさを失ったのはどちらなのか 苛立つのを 近親のせいにするな なにもかも下手だったのはわたくし 初心消えかかるのを 暮…

輝き

鶯の初音より歩を緩めけり 夕焼の中に立つ子を諭しけり 夕焼けの中泣きべその手を握る ふて腐れ居る子に盛りぬ栗ごはん 霧に灯の濡れ海底に棲むごとし 寒雁の声胸中に降るごとし 鶴唳の胸中に降るごとくなり 暁闇の鶴唳胸に降るごとし 控訴状書き上げ月を惜…

螻蛄鳴くや一夜をうたふ子守唄 木犀や胸の子寄する子守唄 木犀や子の胸に寄る子守唄 木犀や胸に引き寄せ子守唄 肩の子の指差す星座キャンプの夜 肩の子に教はる星座キャンプの夜 絵日記をはみ出して居る西瓜かな 絵日記を飛び出すばかり西瓜描く 逆上りの蹴…

分け入りて胸の高さの麦を刈る 分け入りて胸の高さの草を刈る 分け入りて胸の高さに早稲を刈る 分け入りて胸の高さに草を刈る 分け入りて胸の高さに麦を刈る 分け入りて胸の高さの蕎麦を刈る 分け入りて胸の高さに萱刈りつ

水に置く流灯よ手を離れざる

日焼子の耳打聞えゐたりけり 日焼子の耳打聞え来りけり 日焼子の耳打の声聞えをり

茄子の馬