蕗の葉を露流れ来て露毀つ

梢より灯る夜霧の街の角 

梢より灯りゆく街霧降れり

梢より灯りし街の夜霧かな

月影の一筋に滝のぼりけり

凍滝に月一筋になりにけり

月影の凍滝に一縷なり

名月や絹糸のごと滝一縷

十三夜滝絹糸を織るごとし

後の月滝絹糸を織るごとし

絹糸のごとき滝ありけふの月

月今宵滝絹糸を織るごとし

今日の月滝絹糸を織るごとし

名月や絹着るがごと滝一縷

一筋の月影の滝淡きかな

峡空を出でて夜をゆく帰燕かな

峡空を出でて夜をゆく渡り鳥

初鴨の夜をゆく峡の月白し

日の当る坂道歩む威銃

日の当る山へ刈りゆく晩稲かな

日の当る湖へ刈りゆく晩稲かな

晩稲刈日当る海へ刈り進む

目深なる子の冬帽子宮参り

冬帽を目深に被す宮参り

冬帽子深き産土参りかな

青北風や大河をのぼる真帆白帆

青北風や上潮のぼる真帆白帆

青北風や潮流のぼる真帆白帆

青北風や波を蹴り立つ真帆白帆

青北風に立つ帆柱や忘れ潮

上潮をのぼる白帆や渡り鳥

身ほとりの闇より黝し夏の河

身ほとりの闇より昏し夏の河

身ほとりの闇より重し夏の河

五月雨に闇より重き大河あり

五月雨の闇より太き河流る

五月雨や闇より太き河流る

闇よりも太き河あり五月雨

火祭の鞍馬路雨に燃え居たり

火祭や夜の雨上ぐる鞍馬みち

火祭や夜雨あげたる闇のいろ

火祭や夜雨あがりし闇のいろ

火祭の夜雨あがりし匂ひかな

火祭の夜雨あげたる匂ひかな

火祭に夜雨あがりし匂ひあり

火祭に夜雨のあがる匂ひあり

火祭に群雨去りし匂ひあり

火祭の群雨去りし匂ひかな

秋の灯や足音残る「もういいよ」

秋の日の落ちかかりけり逆上り 

 

錦木のくれなひ容るる没日かな

錦木のくれなひ奪ふ没日かな 

錦木の紅つのる没日かな

鶺鴒の羽音に散れりプラタナス

みづうみに宵の雨あり松手入

みづうみに宵の雨あり後の雛

みづうみに宵の雨あり初紅葉

みづうみに宵の雨あり新松子

駒鳥の高音伸びたり山毛欅峠

かりがねの峠より降る高音かな

峠より降る初鴨の高音かな 

深空より降る初雁の高音かな 

深空より降る初雁の声高し

薄氷や海潮渡る弥撒の鐘

薄氷や空にふくらむ弥撒の鐘

薄氷や溪鳴りわたる弥撒の鐘

草市の淡青の灯を引きにけり

淡青の灯を引くころや草の市

淡青の灯を引くころよ盂蘭盆

揚舟に日の照り返す立葵

舷梯に日の照りつけぬ立葵

春の夜や脱ぎし衣の匂ひ立つ

身を滑るごとく脱ぎたり花衣

秋袷滑らしむるが如く脱ぐ

羅を脱ぐや滑らすごとく脱ぐ

行く秋や沐浴の子の目の雫

行く秋や沐浴の子を泡立てて

子の四肢を泡もて包む良夜かな

子の四肢を泡もて包む夜長かな

子の四肢を泡もて包む柚子湯かな

菊月や泡もて円く洗ふ吾子

子の四肢を泡もて包む初湯かな

カステラのやうな子の頬小鳥来る 

カステラのやうな子の頬秋澄めり

蕗の葉を流るる露となりにけり 

蕗の葉に雫こぼるるばかりなり

蕗の葉の露流れ来て露毀つ

梢より花街の灯よ新走り 

梢より夜霧の街の灯りゆく

梢より夜霧の街の灯るかな

梢より夜霧の街の灯りけり

梢より夜霧の街の灯るなり

海鳥のこゑ呼び交す野分あと

海鳥の呼び交すなり野分あと

呼び交す海鳥のこゑ野分あと

呼び交す海鳥のこゑ秋夕焼

青北風にやすらふ瀬戸の白帆かな

青北風にシャツ干す両手拡げたり

帰燕より碧落近し山毛欅峠

帰燕より天上近し山毛欅峠

帰燕より青天近し山毛欅峠